「みみっちい」国の「みみっちい」政治<著述家・菅野完>

◆ロッキード事件に匹敵する大事件なのか 1976年2月6日。アメリカ上院は「多国籍企業小委員会」の公聴会を開いていた。米国最大手の航空機メーカー・ロッキード社の海外不正送金事件を糺明するためである。 証言席に座るロッキード社のコーチャン社長は、冒頭からいきなり、日本に対する不正送金に関する証言を滔々と語り始めた。その中で飛び出したのが、「ピーナッツ125個受け取りました」「ピーシーズ100個受領」などと書かれた「受領書」についての証言だ。「ピーナッツ」も「ピーシーズ」もそれぞれひとつが100万円を指すのだという。前掲の事例の場合、それぞれ、1億2500万円と1億円ということになる。しかもどうやら「ピーナッツ」も「ピーシーズ」も、ロ社から日本に仕向ける際は、100個が、つまりは1億円が、最低単位らしい。その大量の金が、さまざまなルートを経て、日本の政財界にばら撒かれた……。 50年近く前のロッキード事件をいまさら持ち出したのは他でもない。世間を騒がす「自民党パーティー券裏金事件」を、「ロッキード事件に匹敵する大事件」と形容する御仁が後を断たないからだ。「現金」を受け取った関係者の多さ、自民党全体に与える影響の大きさなどを考えると、今回の事件は、ロッキード事件に勝るとも劣らない大事件なのだと彼らはいう。 しかし、少し待って欲しい。「自民党パーティー券裏金事件」が、もしそれほどまでの大事件だとするならば、これほど情けない話もないではないか。 1個1億円の「ピーナッツ」を山と盛り、ふんずと鷲掴みにし、永田町のみならず、丸の内や大手町など各方面に、節分の豆まきよろしく、どうだこれでもかと撒きに撒いたのが50年前のロッキード事件である。豪気な話ではないか。 一方の「自民党パーティー券裏金事件」。本稿執筆時点(12月10日日曜日)の報道によると、「複数の安倍派所属議員の政治資金収支報告書未記入分を、過去5年分に遡って総合計して、1億円を超えた」と騒いでいる。5年で1億。1年にすれば2000万円だ。人によって濃淡あるのであろうが、安倍派所属の議員は100名なのだから、平均すると1人1年20万の計算になる。1ヶ月単位に割り込めばわずか1万6000円。これじゃ、高校生の小遣いだ。 「さらに捜査が進めば桁が一つ増えるかもしれない」という指摘もあろう。しかし桁が一つ増えたとて、1ヶ月あたり1人16万円にすぎない。実に「みみっちい」話ではないか。

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