自民パー券事件〝次の標的〟特捜「逮捕のハードル」下げ捜査加速の狙いか 池田議員逮捕で急展開、永田町で飛び交う憶測

自民党派閥のパーティー収入不記載事件が急展開した。東京地検特捜部は政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で、安倍派(清和政策研究会)所属の衆院議員、池田佳隆容疑者(比例東海)を逮捕した。悪質な証拠隠滅工作に厳しい対処をしたという指摘がある一方、「逮捕のハードル」を下げて捜査を加速させたとの見方もある。永田町では「次の標的」をめぐって憶測が飛び交っている。
「自民党所属の国会議員が逮捕されたことは、大変遺憾で、重く受け止めている」
岸田文雄首相は7日、池田容疑者の逮捕を受け、官邸で記者団の取材にこう語った。自民党は同日付で池田容疑者を除名処分とした。
逮捕容疑は、ともに逮捕された政策秘書と共謀して、2022年までの5年間で、安倍派から還流されたパーティー収入計4826万円を、政治資金収支報告書に記載しなかった疑い。
過去の同様事件を考慮して「逮捕はない」との見方があったため、自民党関係者からは「想定外」と声もあがる。
背景には、池田容疑者側の証拠隠滅工作が、特捜部を強硬姿勢にさせた面もありそうだ。特捜部が先月、関係先を家宅捜索する直前、パーティー券の販売記録など、データの入った記録媒体が破壊されていたという。事務所関係者同士のLINE(ライン)のやりとりも削除されていた。
今後、捜査はどうなりそうか。
特捜部は、安倍派で還流額が計5000万円超にのぼる大野泰正参院議員(岐阜選挙区)や、4000万円超とされる谷川弥一衆院議員(長崎3区)の立件に向け、詰めの捜査を進めているという。
加えて、安倍晋三元首相が2021年11月に派閥会長に就任後、「還流廃止」を指示していたのに、安倍氏が翌年7月に凶弾に倒れた後、当時事務総長だった西村康稔前経産相らが廃止を撤回したとの報道もある。特捜部は、西村氏らの認識について慎重に調べているという。
司法関係者は「特捜部は、還流システムが構築された経緯も調べており、派閥の運営を取り仕切る歴代事務総長らの関与も焦点になる」と指摘する。
通常国会は今月末に召集される。国民の「政治への信頼」を取り戻せるのか。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田首相の危機意識や、スピード感の甘さが指摘されている。事件を受けた政治刷新本部も、陣容などから改革への〝本気度〟が疑問視されている。国民は、岸田政権の有事への対処能力に厳しい視線を送っているのではないか」と指摘した。

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