ナプキン8万枚、被災地に 生理ケアは欠かせぬ支援 ネットで議論も

避難生活の長期化が懸念される能登半島地震の被災地では、女性特有の健康問題である生理のケアも課題となっている。生理用品を扱う業界団体は、すでに8万枚の生理用ナプキンを被災地に届けたが、専門家は「女性が避難先で気兼ねなく手に取れる環境整備も大切」と話す。一方、ネット上では「ナプキンより水と食料が優先」などという一部の声に、多くの反論が上がり、関心を集めた。産婦人科医は「感染症防止のためにも、女性の生理のケアは欠かせない」と話す。
支援は継続
生理用品を巡っては、衛生材料関連の業界団体「日本衛生材料工業連合会」が国の要請を受け、これまでに8万枚を超すナプキンを被災地に送った。
「被災した自治体から要請が続いており、国内メーカーの協力のもと、商品と輸送手段を確保して対応している」と担当者は語る。
ただ、石川県内では道路の寸断もあり、支援が行き渡っていないケースも。知人の県議会議員らを通じて輪島、かほく両市内の避難所に計約4000枚の天然コットンのナプキンを届けたメーカーの男性社員は「そこでは行政からの支援物資が届いておらず、ナプキンは非常に喜ばれたと聞いている」と話した。
手に取りやすい環境を
NPO法人「日本防災士会」の理事、正谷絵美さんは、物資が届いた避難所では、ナプキンを必要とする女性が、気兼ねなく利用できる環境整備が必要だと指摘する。
「物資ごとに棚を作れば、女性が自由にナプキンを取ることができる。人を介して物資を受け渡しする場合でも、女性を担当者にする工夫が必要」と正谷さん。
「一番いいのは、トイレットペーパーと同様に、トイレ内にナプキンを常備すること。被災地のトイレ環境は現状劣悪だが、ナプキンをトイレ内の清潔な場所に置いておける台を設置すれば、多くの女性が助かるのではないか」と語る。
ネットで論争も
生理用ナプキンの支援については発災後、X(旧ツイッター)などの交流サイトで議論が巻き起こった。
「水や食料が優先ではないか」「男にもその分何か配ってくれないと不平等」などいう投稿に、「女性の生理について理解が足りない」「性教育を受け直した方がいい」といった批判や反論が相次いだ。
山王病院(東京都港区)産科部長で産婦人科医の大柴葉子医師は「避難先で、排尿回数やナプキンやタンポンの交換回数が減ると、重大な尿路感染や骨盤内感染の元となりえる」と警鐘を鳴らす。
「感染すると、痛み、局所の発赤やただれなどの皮膚病変、進展すると発熱など全身症状も現れるため、女性の生理ケアは欠かせない」と大柴医師。
また生理痛などの症状緩和には、身体を温めることが大切だという。
「女性は男性に比べ、基礎代謝が低く、また体脂肪率も高い。そのために体表面や四肢末端は冷えやすく、血液の循環が悪くなる。生理中は自律神経も通常より敏感であり、痛みを伝える炎症物質も産生される。ストレスや温度差は体調に強く影響するため、身体を温め、ストレス軽減を心がけてほしい」と呼びかけている。

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