能登半島地震で懸命な救援活動や厳しい避難生活が続くなか、許しがたい〝偽物〟が横行している。迷彩服姿の「偽自衛官」が出没していると地元自治体や自衛隊が注意を呼びかけた。「偽義援金」の募集も行われているほか、ネットでは地震の原因などに関する「偽情報」も出回っている。生成AI(人工知能)技術の向上でデマが一段と巧妙になることも危惧される。専門家は注意すべきSNSの存在を指摘した。
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石川県穴水町は10日、X(旧ツイッター)で、「町内で偽物自衛官の出没情報がありました! ニーズ調査を行う自衛官を装い、ウロウロしているとのことです」「偽物自衛官も迷彩服を着ていますので、注意してくださいね!」と投稿した。
被災地では自衛隊が懸命に救助活動にあたっているが、自衛隊の吉田圭秀統合幕僚長も「われわれは組織で動いているので、単独で孤立地域の家屋を訪ねていくことはない」と警告した。
消費者庁の新井ゆたか長官は11日、義援金詐欺の疑いを含むトラブルが複数発生していると注意喚起した。市役所の職員を名乗って義援金を募る電話など、同日午前10時までに地震関連の消費生活相談は計29件寄せられたといい、実際の相談は、さらに多いとみられる。
ネット上の「偽情報」も深刻だ。
地震発生直後、Xでは、2011年の東日本大震災当時の津波動画を添付し、「逃げてください」と警告したり、「挟まれて動けない」と架空の救助要請を求める投稿も拡散した。地震の原因を「人工地震」としたり、輪島市の火災は「エネルギー兵器」を使用したものとするなど、根拠のない「陰謀論」も飛び交った。
ITジャーナリストの三上洋氏は「多くの『偽情報』投稿の大半は、閲覧数を増やして収益を稼ぐことが目的だ。過去の投稿に日本語以外の言語が使用されていたり、プロフィルに日本と関係のないことが書いてあったりすることが多い。投稿の内容も他の投稿のコピペだったりするので、確認して見極めるべきだ」と警鐘を鳴らす。
進化が目覚ましい生成AIも「偽情報」に利用される懸念があるという。
「今回も投稿内容を生成AIが作っていたり、話題の投稿をコピペや学習したりして自動的に拡散された可能性もある」と三上氏は指摘する。
SNSの中でも特に注意を要するのは、「ショート動画」だと三上氏は語る。
「TikTok(ティックトック)のようなサービスは近年は若年層を中心に利用者が多いが、動画の出所も明確ではないこともあり、『偽動画』が横行する恐れがある。津波や家屋倒壊などのショッキングな動画は、Xと比べても感情を動かしやすい。政府も運営会社に虚偽投稿の規制に向けて働きかけていくことが重要だ」と強調した。