地震発生から2週間被害を最小限に食い止められたのか…「国が主導権を発揮すべき」初動対応の遅れ指摘する声も【news23】

発生から2週間を迎えた能登半島地震。これまでに222人が亡くなり、このうち災害関連死は14人に上っています。被害を最小限に食い止められたのか…。被災地で医療支援に当たる新潟大学の榛沢和彦医師は、「災害への備蓄が足りないことが初動対応の遅れを招いた」と指摘します。
足りない物資の備蓄「初動」対応に遅れ
222人が亡くなり、依然、22人の安否がわかっていない今回の地震。
石川県は15日、地震による犠牲者について、遺族の同意が得られた23人の名前を公表しました。亡くなった方の中には10歳の男の子が含まれています。死因は家屋の倒壊や土砂災害だということです。
突然の地震によって奪われた命。災害関連死も増え続け、14人に上っています。
被害を最小限に食い止めることは、出来ているのか?
専門家からは「初動」対応の遅れを指摘する声も上がっています。
新潟大学榛沢和彦医師「(初動は)遅いと思いますよね。国がもう少し主導権を発揮してやらないといけないと思います」
新潟大学の榛沢和彦医師。能登半島地震の被災地で医療支援にあたっています。
――(初動が)なぜ遅い?「備蓄がないからです。災害支援物資すべて、食料、水、トイレ、それからベッドですね。あと毛布とかそういった物が、ほとんどないに等しいと思います」
その為、必要な物資を発生後に準備して送ることになり、支援の初動に遅れが出ていると訴えます。
さらに、自衛隊の活動報告によると、現地で自衛隊が仮設の風呂を設置したのは発生から6日目のことです。
熊本地震では地震の翌日に自衛隊の入浴支援が始まっていて、衛生面の整備も遅れが出ている状況です。
また、珠洲市などで仮設住宅の建設が始まったのは今月12日。阪神淡路大震災では発生の3日後には建設が始まっていて、スピード感に課題が残ります。
榛沢医師は、これだけ災害が多い日本では地域の特性を加味した備えが必要だと話します。
新潟大学榛沢和彦医師「半島はメインの道路が壊れると、ほとんど孤立してしまうので、そういったところがわかっているのであれば、入浴施設も含めて備えておくことが、本来は必要だったのではないかと思います」
総理「先手先手で」問われる実行力
14日、地震発生後、初めて能登地方を視察した岸田総理。避難所で地元の住民から話しを聞きましたが…
避難所で生活する人「私もちらっとしか(総理の)顔は見ていないんですけど、直接話を聞けたわけではないので、もっとちゃんと話ができればなと思いました。もっと早く来てほしかったですね」
その後、岸田総理は石川県の馳知事らとの意見交換で、これまでの政府の対応について、こう強調しました。
岸田総理「政府においては発災直後から、何としても我々は先手先手で取り組まなければいけないと、連日言い合いながら努力を続けてきた」
『先手先手で努力』、その本気度が問われています。
被災地は再び大雪 強風にも警戒 低体温症に注意
小川彩佳キャスター:被災地では雪も心配になっているんですね。
森田正光気象予報士:風も強くて、どちらかというと山で雪が多くなる山雪型の気圧配置になってます。16日夕方までの予想降雪量、多いところで、東北・関東甲信・北陸で80センチ、北海道で50センチ、能登(平地)でも20センチということで、しかも湿った雪なので重くて、それがきっかけで建物の倒壊とかありえると思います。
今後の被災地の週間天気です。雨だと気温が高くなるのかと思いがちなんですが、気温は1℃、2℃なんです。冷たい雨なので本当に寒いと思います。むしろ雪よりもやっかいと言えるかもしれません。
小川キャスター:身体を冷やしてしまう雨ということになりますね。
そこで気をつけていただきたいのが低体温症なんです。山岳医療救助機構によりますと、低体温症の体温は個人差があり、「震えがあるか」、「意識がしっかりしているか」を確認することが大事だということです。
対策としては…
▼なるべく厚着をする。ビニール素材などがあればくるまる▼風をよけたり濡れた服は脱ぐ▼温かくなくても水分をとる。寝る前に食事をとる
こうしたことに気をつけて、身を守っていただきたいと思います。
「初動対応は遅かった」「国はもっと前面に出て対応すべき」
藤森祥平キャスター:被災した地域で、まだ孤立しているところが石川県でも15もあります。避難所の改善を求めている人たちもたくさんいます。その中で自衛隊の派遣について見ていきます。
熊本地震では発生から5日目で災害派遣された自衛隊員は2万4000人規模だった。しかし、今回の能登半島地震では5日目で5000人という規模でした。
単純に人数を増やせばいいという問題ではないかもしれませんが、これについて木原防衛大臣は5日の会見で、「半島での災害という特殊性があった。道路の復旧状況など見ながら人数を増やしていった。逐次投入の批判は全く当たらない」と話をしています。
もうこの地理的な特殊性ということを納得せざるを得ないのかどうなのか。
プチ鹿島さん:僕も印象的だったのは発生後の記事で、自衛隊の幹部の方が「一番起きて欲しくない場所で起こった」と述べていたんですよ。その通りだと思うんですが、でしたら気になるのが起きる前ですよね。防災というのが自治体とか政府でどれだけ準備をしていたのか。群発地震も常に起こっていた所ですから、そこがちょっと知りたいですよね。
藤森キャスター:被災地で医療支援を行っている榛沢和彦医師は、「半島は道路が壊れると孤立するとわかっているなら備えておくことが必要だった。災害省庁を作って、この地域はどういう災害が起きやすいのか計算して備蓄をしないといけない」と話していました。
自衛隊の支援が初めて入った地域でほっとされている方々の様子を見ると、支援が少しでも早く行われなかったのはなぜなのか。日本はこれまでいろんなところで大きな災害がありますから。
TBSスペシャルコメンテーター星浩さん:神戸も熊本も地震が起きたのは大都市だったんですよね。今回の地震は半島でもあるし、大変な過疎地なんです。こういう場合での救助や復興に対してやっぱり政府が前面に出ていかないと対応できないんですけど、やはり自衛隊の対応は逐次投入、初動は遅かったと言わざるを得ないと思いますね。
ちなみに熊本地震のときは、当時、菅官房長官が各省庁の官房長に対して「現地に行け」という命令をして、熊本周辺に“ミニ霞が関”を作って対応したっていう。当時は「ちょっとやりすぎじゃないか」っていう批判も出たぐらいなんです。
やはりこういうときは総理官邸の中で大声を出して「大変だ」と騒ぐ人がいないと駄目なんですが、岸田政権は官僚から上がってくるのを待ってるという対応なので、遅れが少しずつ、だんだんと大きくなっていくっていうのが現状だと思います。
これから挽回してもらいたいと思いますし、最近ですと、支援者をさらに支援しなくちゃいけないっていう時期にきているんですよね。その辺は国がもっと前面に出て対応する必要があると思います。
総理と馳知事 14日に初めて被災地入り
藤森キャスター:14日、総理とともに石川県の馳浩知事も地震発生後に初めて現場を訪れました。馳知事は「県庁に情報が集約されるので、適時適切に指示を決済しなければいけません。私も1月1日から24時間、知事室に滞在しております」と話しています。
小川キャスター:これに関しては皆さん色々なご意見をお持ちかと思います。
確かに、リーダーは俯瞰して執務室からいろいろな指揮をとるべきだという、それがリーダーのあるべき姿だという考えを持っている方もいらっしゃるでしょうし、一方で、直接、被災地の皆さんに語りかけてこそリーダーだと、そう思われる方もいらっしゃると思うんですけれども。
プチ鹿島さん:リーダーの言葉とか振る舞いですよね。どうしてもセレモニーに見えてしまうっていう声もあると思うんですけど、僕は「セレモニー」という言葉自体は悪くはないと思っていて、例えば、僕らは毎日セレモニーの繰り返しだと思うんですよ。社長さんが朝礼でセレモニーで何を言うか。
でも、それを超えた言葉がきたとき、人って響き合ったりとか、はっとしたりするじゃないですか。そういう言葉ですよね。セレモニーからだとしても、そこから来るリーダーの生身の言葉っていうのを現地では聞きたかったんじゃないかなと思うんですよね。馳知事にしても、岸田さんにしても。
小川キャスター:そういった言葉を聞いてほっとされるという方もいらっしゃったかもしれないですよね。
とにかく今は能登半島の皆さんへの最善を尽くしていくということ。行政も、そして個人も今どこで地震が起きてもおかしくないというのがこの日本の状況ですから、今足元の防災・備えはどうなっているのか。そうしたことも確認していただければと思います。
岸田総理が被災地初訪問 タイミングをどう思う?「みんなの声」は?
NEWS DIGアプリでは『岸田総理が被災地を初訪問 そのタイミング』などについて「みんなの声」を募集しました。
Q.岸田総理 地震から14日目での被災地初訪問は?
「適切なタイミングだと思う」…7.4%「遅すぎると思う」…78.5%「他の公務もありやむを得ない」…6.5%「その他・わからない」…7.6%
※1月15日午後11時37分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません

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