自民党の最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー収入を巡る事件で、東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑で告発された同派幹部7人を不起訴とする方針を固めたことが16日、関係者への取材で分かった。派閥の会計責任者との共謀を立証するのは困難と判断したとみられる。
特捜部は会計責任者を在宅起訴する方向で検討し、パーティー収入の一部について高額のキックバック(還流)を受けていたとされる大野泰正参院議員(64)と谷川弥一衆院議員(82)も立件する方針。週内にも刑事処分を決定する見通しだ。
告発されている7人は事務総長経験者や「5人衆」と呼ばれる幹部の塩谷立元文部科学相、下村博文元党政調会長、松野博一前官房長官、西村康稔前経済産業相、高木毅前党国対委員長、世耕弘成前党参院幹事長、萩生田光一前党政調会長。
関係者によると、同派は派閥のパーティー券販売について所属議員の当選回数や役職によってノルマを設け、それを超えて売った分を議員側に還流。さらに、10人以上の議員側がノルマ超過分を派閥に納めず手元にプールしていた疑いがある。
いずれも派閥や議員側の収支報告書に記載せず裏金化していた疑いがあり、安倍派全体の裏金総額は、収支報告書の不記載・虚偽記載罪の時効にかからない2018~22年の5年間で6億円近くに上る可能性がある。
特捜部は幹部らへの任意の事情聴取で認識や会計責任者とのやりとりなどを確認したが、いずれも不記載への関与を否定。他に会計責任者との共謀を示す証拠も見当たらないことから共謀の認定は困難と判断したとみられる。
一方、議員側の還流額は大野氏が約5000万円、衆院議員池田佳隆容疑者(57)=政治資金規正法違反容疑で逮捕、自民党除名=が約4800万円、谷川氏が4000万円超と特に高額で、特捜部はこの3議員を立件対象とみているもようだ。
[時事通信社]