能登半島地震では各地で液状化とみられる被害が確認され、石川県内灘町の河北潟干拓地では、住宅や電柱などが相次いで損壊した。専門家によると、日本海側は砂地が多く、被害が拡大したという。住民からは「家を取り壊すしかなく、先が全く見えない」との声も出ている。(平松千里、家田晃成、北島美穂)
金沢市の北西に隣接し、震源に近い珠洲市から南西に約100キロ離れた内灘町西荒屋の住宅地。町の震度は5弱だったが、至る所で道路が波打ち、標識や電柱が倒れかかっている。会社員男性(65)の木造2階住宅も基礎ごと大きく傾いた。
「揺れの最中、居間の窓から普段は見えない、1メートルほど下の駐車スペースに止めた車が目に入った」。妻(62)が外に出ると、駐車スペースは1メートルほど隆起し、水浸しとなっていた。
傾いた自宅内を歩くと平衡感覚が狂う。男性は「取り壊すしかない。奥能登に比べたら、ここはまだマシだが……」とつぶやいた。再建は諦めて町内のアパートに引っ越す予定だ。
内灘町は砂丘が延びる海岸線と河北潟に挟まれ、干拓地に多くの住宅が開発された。江戸時代の1799年に起きた金沢地震でも液状化の記録が残っており、町は東日本大震災後の2013年、液状化マップを作って対策を呼びかけていた。
町によると、15日時点の 罹災 証明書の発行申請は1095件で、大半が液状化被害とみられるという。
防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の先名重樹・主任専門研究員は、富山県などでも液状化の被害を確認した。日本海側では季節風が砂を陸側に運ぶため、山陰から東北地方にかけて砂の多い地層がある。先名氏は「地盤が砂を多く含むうえ、揺れる時間が長かったことなどが影響した可能性がある。震源から遠い地域でも注意が必要」と指摘している。