元日に最大震度7を観測した能登半島地震では、激しい揺れで倒壊した自宅の下敷きになった石川県能登町の中学1年、森銀治郎さん(13)が命を落とした。県が遺族の同意を得て氏名を公表。優しくユニークで、人気者だったという森さん。そんな友人を奪った地震に、同級生は「悲しく、言葉にできない」と声を詰まらせた。
森さんは、現在避難所となっている町立松波中学校に通っていた。保育園の頃から一緒に過ごし、中学でも同じソフトテニス部に所属している同級生の梶山知里さん(12)は「優しい性格で、休み時間はずっと面白いことを言って、みんなに慕われていた」と振り返る。
梶山さんによると、中1は1クラスのみの14人と小規模だが、その中でも森さんは成績が優秀だった。スポーツも万能で「テニス部の1年生の中ではかなり上手」。最後に直接話したのは、部活動のあった昨年12月28日。校内戦が行われ、梶山さんが「何勝した?」と聞くと、森さんは「全勝した」とうれしそうに笑顔を見せたという。
地震のあった元日、梶山さんは福井県内の祖父母宅にいた。大きな揺れがあった直後、友人たちに安否を尋ねるメッセージを送ったが、森さんへのメッセージに「既読」が付くことはなかった。森さんの家族にもメッセージを送ったが、《もう助からんかも》と返信があった。
梶山さんや近隣住民によると、森さんは地震の激しい揺れで崩れた自宅の下敷きになって亡くなった。近所に住む女性(75)は、余った贈答品のハムを森さん宅に届けた際、出てきた森さんが「うわあ大好き。うれしい」と無邪気に喜ぶ姿を今でも覚えている。「なぜ子供がこんなことになるのか。つらくてたまらない」と女性は涙ぐんだ。
梶山さんも自宅が地震で住めない状態となり、避難所で暮らしている。同級生の森さんを失った心の傷は深い。「悲しい。ずっと仲が良かったから」。そして、人の命だけでなく、平穏な日常までも奪った地震には怒りさえ覚える。
「腹が立つ。もう起きてほしくない」
(前原彩希、北野裕子)