【速報】逆転勝訴 旧優生保護法訴訟で国に1320万円の賠償命じる判決 不妊手術めぐり70代夫婦が賠償求めた裁判 長男出産の3日後に何の説明もないまま手術

「戦後最大の人権侵害」とも言われる旧優生保護法下の不妊手術をめぐり、大阪府に住む70代の夫婦が国に賠償を求めている裁判の控訴審。1月26日、大阪高裁は1審を破棄して、国に1320万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。▼長男出産の3日後に…何も知らされないまま不妊手術裁判を起こしているのは聴覚障害のある70代の夫婦(大阪府在住)です。夫婦は複数人の子どもを持ちたいと望んでいました。しかし妻は、1974年に福井県の病院で長男を出産した3日後、医師や親族から一切説明もないまま、旧優生保護法に基づく不妊手術を受けさせられました。夫婦は「基本的人権を根底から侵害され、多大な身体的・精神的損害を受けた」として、国に対し計2200万円の賠償を求め、2019年12月に提訴しました。▼争点は「除斥期間」“不法行為が起きた時点から20年”この国賠訴訟でも争点となってきたのが、“損害賠償を請求できるのは不法行為が起きた時点から20年”とする「除斥期間」です。夫婦側は、除斥期間の起算点を手術の実施時としないよう求め、「早くとも、国会で厚生労働大臣が、旧優生保護法による被害の重大性や救済の必要性を明言した2004年3月を起算点とすべき」と主張しました。▼一昨年の大阪地裁判決 違憲と断じ原告側の事情に理解示すも…最終的な結論は「請求権は消滅していた」2022年9月の判決で大阪地裁は、旧優生保護法について「非人道的かつ差別的で、憲法の基本理念に照らし是認できず、違憲」と断じました。そのうえで「国が正当化・助長した差別・偏見の下で、原告らは提訴の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく難しい環境にあった」「除斥期間の適用をそのまま認めるのは、正義・公平の理念に反する」として、夫婦側の事情に理解を示しました。「そうした事情=『提訴の前提となる情報や相談機会へのアクセスが著しく難しい環境』が解消されたのは、旧優生保護法下の不妊手術をめぐる初の国賠訴訟が仙台地裁で起こされた、2018年1月から間もない時期とみるべきだ(実際その頃に原告らは、長男夫婦から不妊手術が旧優生保護法に基づくものだった可能性を教えられている)。今回の訴えが起こされた2019年12月は、その時期から6か月以上が経過していて、請求権は消えていた」と結論づけ、請求を棄却しました。判決を不服として原告夫婦は控訴しました。▼夫婦が逆転勝訴「手術痕の診断書を取得した時から6か月以内に提訴している」賠償請求権を認める大阪高裁(阪本勝裁判長)は1月26日、旧優生保護法を改めて違憲と断じ、1審と同様に除斥期間をそのまま適用することは避けた上で、「提訴が困難な事情が解消されたのは、夫婦が下腹部の切開創についての診断書を取得できた2019年8月とみるべき」として、“時効停止の6か月”の起算点を変更。提訴が行われた2019年12月時点では、賠償請求権は消滅していないと結論付け、国に1320万円の賠償を命じる逆転勝訴判決を言い渡しました(妻に1100万円/夫に220万円)。▼逆転勝訴した妻「霧が晴れたような感じで大変喜んでいる」判決言い渡し後、逆転勝訴した妻は大阪市内での会見で「今まで苦しい戦いをしてきた。霧が晴れたような感じで大変喜んでおります」「本当だったら子どもを産んで育てたたかったという気持ちは今もあります」「国には謝罪してほしい」などと語りました。▼除斥期間めぐり最高裁が統一見解を示す可能性1948年に成立した旧優生保護法(1996年に母体保護法に改正され、優生思想に基づく規定がが削除)の下では、障害がある人などに対し、全国で約2万5千件にのぼる不妊手術が実施されました。2018年1月の仙台地裁での提訴を皮切りに、手術で被害を受けた人たちが全国で国に賠償を求める裁判を起こしていますが、各高裁で判断が分かれる中、5つの裁判について最高裁が上告を受理。今後、判事15人全員が参加する大法廷で審理されることになっていて、除斥期間の適用について、最高裁で統一的な判断が示される可能性が出てきています。

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