「あったかい便座が懐かしいね」 汚物が重くてビニール袋が破れたことも 断水続く被災地のトイレ問題 能登半島地震

能登半島地震の発生から1か月がすぎましたが、依然として石川県では広い範囲で断水が続いています。現地での「トイレ」問題を取材しました。
(輪島市内に住む女性)「たまった尿をペットボトルに移している」
1月23日。輪島市内に住む女性は、被害の無かった兄の家に避難していました。
しかし、長引く断水…このため1日3回、自宅トイレにたまった尿をペットボトルに移し替えていました。
(輪島市内に住む女性)「(Q.何が一番大変でしたか?)トイレですね、やっぱり」
大便は、避難所でもらった専用キットを使い、黒いビニール袋に凝固剤を入れて処理しているということでした。能登半島地震の被災地では多くの場所でいまも断水が続き、石川県によりますと水が使えるのは4月以降になる地域もあるということです。
ここは、火災があった輪島の朝市通り付近。公衆トイレを始め被災地のトイレの多くが水が流せなくなり、使えない状況に。
また、避難所では、雪が降る中でも仮設トイレを使うために外に出なければなりません。
こちらの避難所では、住民たちが毎日当番制で仮設トイレの掃除をしていました。避難直後には…
(避難している女性)「どうしても水が流れないと、あふれてしまって大変だった」
出会った女性は避難所に身を寄せるまでは、自宅の庭に急ごしらえのブルーシートで目隠しをしたトイレをしつらえ、乗り切ったと話します。
そして、仮設トイレについては…
(避難している女性)「トイレは最初は大変だった(そこから)仮設トイレがきて段階を踏んで、みんなでちょっとずつ協力して、ちょっとずつ我慢して掃除もできるようになった」
しかし。
汚物が重くて破裂 「当たり前じゃなくなるってこんなにしんどいんだ」
(避難している女性)「若い人しか(ビニール袋を)持てない。汚物なので重くて破裂してしまって悲壮感漂わせて片付けていた。当たり前が当たり前じゃなくなるってこんなにしんどいんだ…」
こうした中、全国各地から石川県には移動式のトイレトレーラーが派遣されていました。一般社団法人「助けあいジャパン」は、トイレトレーラーを全国の自治体に届ける取り組みを行っていて、災害時には被災地に派遣する協定を全国20の自治体と結んでいます。
(牧野恵美記者)「こちらのトイレトレーラー。実は小学生限定のトイレなのです」
珠洲市の蛸島小学校には、始業式に合わせて児童に安心して使ってもらいたいとトイレトレーラーが北海道沼田町から1月22日に届けられていました。
(小学生)「地震前に使っていたトイレと似ていて、いつも通りの感じでよかった。仮設トイレは、穴が空いているからそこから臭う。トイレトレーラーは流した後に閉まるから臭わなくていい」
設置に奔走する「助けあいジャパン」の石川代表に聞きました。
(助けあいジャパン・石川淳哉共同代表理事)「避難してから亡くなること(災害関連死)は、我々が止めることができる。南海トラフ巨大地震でこの仕組みがあると、めちゃくちゃ役に立つ」
また、愛知県からは刈谷市と阿久比町から「災害用トイレトレーラー」が、石川県に派遣されています。いま、なお続く被災地のトイレ問題。
(穴水町で避難している女性)「出さないというわけにはいかないし、尿はこらえられないが大便は長いこといかなかった」「最初は緊張で下痢気味で、その後今度は便秘になった」「一日でも早く水がほしい」
(輪島市で避難している女性)「あったかい便座が懐かしいね」
2016年の熊本地震の際に、NPO法人「日本トイレ研究所」が被災した皆さんに行ったアンケートでは「避難生活の初期において最も困ったことは?」という質問に対し「食事」より「トイレ」の問題が上回っていました。
そして今回、災害派遣医療チーム=DMATの一員として、石川県内で医療支援を行っている、名古屋大学病院の山本尚範医師はこう指摘します。
(山本尚範医師)「トイレを我慢することによる色々な弊害が出てくる。我慢していると、菌が尿道を通って逆流してくる。膀胱炎など尿路感染症になってしまうことがある」
さらに、山本医師は水分摂取を控えるあまり、命の危険に及ぶ場合もあると指摘。
(山本尚範医師)「脱水になりますので、心筋梗塞や脳卒中、脳梗塞などの血管が詰まるような病気が起きやすくなる」
穴水町で被災した静岡県出身の女性は、いつおきてもおかしくない南海トラフ巨大地震への備えを私たちに話してくれました。
(静岡県出身・穴水町で避難している女性)「いずれ起こるであろう南海トラフ巨大地震。私は静岡県出身なので、こんなに人口が少ないところでも本当に大変なことが起きた。今からでも一日でも早くもっともっと備えてほしい。水は当たり前には手に入らない」

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