大型小売店コストコ(福岡県北九州市)の駐車場に、生後10か月の男の子が家族の車に取り残されて死亡した事件で、警察は2日、両親を重過失致死の疑いで書類送検した。警察がほぼ同じ環境を再現したところ、当時の車内温度は約50度まで上昇していたとみられている。男の子は約2時間半後に発見され、熱中症と脱水症が原因で死亡した。警察によると、本来は前か後ろ向きにしか使用できないチャイルドシートが窓に向いた方向に置かれており、降車時に男の子を目視できなかった可能性があるという。
◆チャイルドシートの向きも「思い込み」の原因か?
書類送検されたのは、中山喜寿生ちゃん(10か月)の母親(26)と父親(27)。喜寿生ちゃんは晴天だった去年8月26日、駐車場の一角にとめられた家族の車に約2時間半にわたって取り残された。発見時は心肺停止の状態で、病院で死亡が確認された。当時、喜寿生ちゃんの両親は、別々に車を降りて買い物をしており、互いに相手が喜寿生ちゃんを「連れていると思っていた」と説明したことがわかっている。警察によると、本来は前か後ろ向きに使うチャイルドシートが「外を向けると落ち着く」という理由で横向きに置かれていた。これが原因で、喜寿生ちゃんが真横にいたにも関わらず母親の“死角”になっていたことも「思い込み」につながった可能性がある。
◆「実際の車両」を使い検証すると50度に上昇
警察は同月29日、喜寿生ちゃんが死亡した黒のワンボックスカーを使って車内の温度を検証。当日とほぼ同じ時刻、同じ条件で車両内の状況を再現したところ、温度は2時間半で約50度まで上昇したという。喜寿生ちゃんは熱中症と脱水症が原因で死亡しており、警察は当初、保護責任者遺棄致死容疑での立件を視野に捜査。約5か月の裏付け捜査の結果、「自助能力のない被害者が、熱中症を起こすなどして生命に危険が及ぶ事態を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、降車させるのを失念し死亡させた」「放置したまま買い物に出かけた重大な過失があった」と判断し、重過失致死の容疑で2日、書類送検した。