鳥取県東部消防局(鳥取市)の救急隊員らが、県立中央病院(同)の複数の医師からパワーハラスメントを受けたと主張している問題で、病院は1日、パワハラやそのおそれのある事例が計6件あったとの調査結果を公表した。県庁で記者会見した広岡保明院長は「医師に『こんなことをしたらいけない』という研修をしなければ」と述べた。(藤本幸大、中島高幸)
消防局側は、2022年1月から2年間にわたって4人の医師から計22件のパワハラを受けたと主張。病院に詳しい調査を求めていた。病院は、消防と医師の通話記録の確認や医師への聞き取りを実施した。
病院がパワハラに該当すると判断したのは1医師の3件。患者の受け入れを要請する病院の選定を巡り「僕が言わなきゃ判断できなかったことですかね」などと高圧的な口調で言う▽救急隊員が患者の年齢を伝える途中で電話を切る――などの行為を確認した。
電話を切った行為について医師は「必要な情報が入ったから切った。相手が切るまで待たないといけないのか。パワハラを受けたとの指摘は逆にモラハラを受けたと感じる」と反論したという。しかし病院は「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」と認定した。
録音は残っていないが医師が否定せず、不適切と考えられる3件の言動については「パワハラのおそれがある」とした。広岡院長は医師の行為について「指導して少しでもよくしたいという思いがあり、行き過ぎた行為があった」と述べた。
一方で「業務上必要な範囲内」などとしてパワハラと認めないものが9件あった。
さらに3件は消防局の主張する言動はなかったとして、広岡院長は「消防局の虚偽だ」と強い言葉で反論した。
例えば隊員が医師から「保健所を通して受け入れ要請をしてください。医師が言っているんだからそうしてください」と言われたとされるケースは、音声を調べたところ、実際は「保健所の指示を仰いでくださいと中央病院の医師に言われたとお伝え願えれば」だったとした。
そのほか、応急手当て装具の位置が誤っていると医師が指摘した際の「だから東部消防はダメなんですよ」や、救急隊員が患者への対応を手伝った際の「救急隊は邪魔なので帰ってください」などの発言は、医師が否定し、録画もなく不明とした。
広岡院長は「消防局と信頼関係を築くには、ちょっとしたことでも言ってもらい、修正していく。意見を言い合える場があればと思う」と話した。
東部消防局は「 真摯 に対応いただいた病院関係者に感謝する。引き続き地域住民のため救急業務に尽力していきたい」とのコメントを出した。広岡院長から「虚偽報告」と非難された点について、消防局幹部は「隊員への聞き取り内容だ」と主張。「事実かどうかを含めて確認してもらうために出した」と説明し、偽りを否定した。