国際犯罪、移送後の逮捕増 地道な協力関係構築と外交努力 「逃げ得許さない」

警察庁が8日公表した令和5年の犯罪情勢で海外にある特殊詐欺の拠点から、犯行グループを国内に移送して摘発した件数が過去最多となったことが明らかになった。その背景には、拠点が多い東南アジア諸国との協力関係を地道に構築してきたことや、現地で拘束してもらい、日本に移送して逮捕する方法を確立したことがあるという。警察幹部は「どこにいても逃げ得を許さず、手段を尽くして着実に摘発していく」と力を込める。
昨年2月、東京都内などで発生した連続強盗事件や特殊詐欺事件の指示役で、「ルフィ」などと名乗っていた男らがフィリピン・マニラから日本に移送され、警視庁に逮捕された。
フィリピンのマルコス大統領訪日に前後した動き。「地道に要請を続けてきた結果だったし、大統領訪日に際しての『手土産』だったのかもしれない」。警察幹部はこう推測する。
5年中に特殊詐欺に関連し、日本に移送して摘発した事件を見ると、フィリピン、カンボジア、タイ、ベトナムからの移送だった。東南アジアは、技術の進歩や滞在しやすさなどから、特殊詐欺の電話をかける「かけ子」グループの拠点が作られやすい。
ただ、この地域の警察当局では汚職が横行しているとされ、暴力団関係者などが現金を握らせて摘発を逃れる例も指摘されてきた。
捜査関係者は「汚職がなくなったとまではいえないが、警察当局同士で交流を重ね、こちらの要請を聞いてしっかり対応してもらえる関係ができてきた」と明かす。
日本に身柄を移送する方法が確立したことも効果を上げている。
日本側が逮捕状を取得して相手国に伝え、現地で在留資格を取り消して不法滞在で国外退去にしてもらうことで、帰国と同時に逮捕するケースも増えてきた。
警察幹部は「相手国の司法制度にのっとって摘発してもらおうとすると時間がかかる上、向こうの捜査機関の負担にもなってしまうので、このやり方はお互いにメリットがある」と話している。
この手法は、特殊詐欺に限らない。
前参院議員のガーシーこと東谷義和被告(52)=暴力行為等処罰法違反罪で公判中=について、警視庁が同容疑で逮捕状を取った際も、滞在先のアラブ首長国連邦(UAE)の当局と日本の警察当局が折衝。日本は東谷被告の旅券返納命令を出した上、国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配をかけ、UAEに事実上の国外退去にしてもらうことで、帰国させての逮捕にこぎつけている。
警察幹部は「犯罪者らに、海外にいても必ず捕まえに来ると知らしめなければいけない」と強調した。(橋本昌宗、外崎晃彦)

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