過去に噴火を繰り返した伊豆諸島(東京都)の伊豆大島と三宅島で、海洋研究開発機構が新年度から、海底火山活動の観測強化に乗り出す。通信用の海底ケーブルを活用して噴火の兆候である火山性微動などをキャッチする。両島はほぼ一定周期で噴火を繰り返しているため、次が迫っているとの見方もあり、噴火を予測したい考えだ。
両島はいずれも、海底火山が噴火して海面上に山頂が現れた「火山島」だ。火山活動は活発で、気象庁が24時間体制で監視する。噴火が起きる前には、海底の震動などの兆候が表れることが多いが、現在は地震計やカメラによる常時監視は全て陸上で行われている。海中に観測網があれば、地震の発生源の情報が詳しく分かり、噴火の兆候をより早く正確に察知できる可能性がある。
新たに始める観測では、両島内の通信用に設置された長さ数百キロ・メートルの海底ケーブルの予備にレーザー光を流し、「地震計」の代わりに使う。海底のどこかでマグマの動きに伴う地震や火山性微動があると、ケーブルがわずかに伸び縮みしてレーザー光が変化するため、地震を観測できる。予備用のケーブルなので通信状況への影響はなく、安価に広範囲の観測が可能になる。
異常な兆候がみられた場合、同機構から報告を受けた気象庁が、噴火警報を発表するかどうかを判断する。噴火警報が発表されると、地元自治体が防災無線やホームページで住民に注意を呼びかける。通信事業者の協力を得て、ケーブルに光を送受信する試験観測を1月から始めており、新年度から本格観測にうつる方針だ。
機構によると、両島ではこの100年ほどの間、100万立方メートル以上のマグマが噴出する「中規模」以上の噴火が一定の間隔で起きている。マグマが深くから上昇して地下の空間にたまっていき、一定量に達すると噴火するためとみられる。間隔は伊豆大島では30~40年、三宅島は20年程度だという。
伊豆大島では1986年、島中央の三原山(標高758メートル)が噴火。溶岩流が市街地へ迫り、約1万人の全島民が1か月間、避難した。それ以降の37年間、中規模噴火は起きていない。三宅島は2000年の噴火で、約4000人の全島避難が4年5か月続いた。噴火は02年まで続き、以降21年間、中規模噴火はない。
機構の火山・地球内部研究センターの小野重明センター長は「マグマの動きに伴う地震や微動を早期に捉え、中規模噴火が起きても被害を最小限に抑えられるよう貢献したい」と話している。