能登半島地震で大きな被害が出た石川県の奥能登地方で、道路の復旧が一部で進んだことなどから、路線バスが徐々に運行を再開している。地震前より本数を減らしたり、ルートを変更したりしているが、高齢化が進む奥能登地方では貴重な「住民の足」が戻りつつある。
珠洲 市で13日、市営バスが一部路線を除いて再開した。市中心部から市内の沿岸部や内陸など各所へ向かう。運行本数は地震前の半分程度だが、避難所を巡るルートを臨時で設けた。
運賃は地震前と同様に無料で、避難所から市総合病院まで利用した女性(78)は、「被災前から病院にバスで通っていたので、再開してほっとした」と話した。
奥能登地方では、先月25日から特急バスが金沢駅と奥能登2市2町間を走っている。しかし、行き先は市役所や町役場などの市街地で、市町各所をつなぐ交通手段の確保が課題になっていた。
能登町でも地元観光バス会社が運行する路線バスが、13日に再開した。町が補助金を出し、町内を一律700円で走る予約制乗り合いタクシーは14日に再開予定だ。輪島市では今月5日、市営無料バスの臨時運行が始まった。公民館で避難生活を送る女性(77)は、「バスが走ると聞いて出かける気になり、買い物に行けた。本当に助かる」と喜んだ。
タクシーは苦境、運転手も被災者
一方、タクシー会社は厳しい状況に置かれている。穴水町のタクシー会社「能登観光自動車」は、3人の乗務員全員が被災し、今は2人で何とか営業を続けているが、輪島市内のタクシー会社社長は「廃業せざるを得ない」と話す。
県タクシー協会によると、4市町の会員12社のうち、車庫の損壊や従業員の被災で半数の6社が廃業か長期休業の見通し。登録車両は計約50台から20台ほどにまで減る見込みだという。
同協会役員は「経営者自身が地域外へ避難しているケースもある」とし、「(奥能登地方は)過疎の町。高齢者福祉と同様に考え、交通業界を支援してほしい」と訴える。
県は、設備や施設を復旧した中小企業を対象に費用の一部を補助する県の「なりわい再建支援補助金」を活用して、タクシー会社の業務継続を後押ししたい考え。「市町の方針を聞き、支援策を検討したい」(県交通政策課)としている。