宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日午前9時22分、新型主力ロケット「H3」2号機を種子島宇宙センター(鹿児島県)から発射した。機体は予定の高度約680キロに到達し、搭載した超小型衛星2基をそれぞれ正常に分離。ロケットの性能確認用の模擬衛星の分離動作も確認でき、打ち上げは成功した。
同センターで記者会見したJAXAの山川宏理事長は「日本の宇宙開発の自立性と国際競争力の確保に向けて非常に大きな一歩だ」と話した。岡田匡史プロジェクトマネジャーは「満点です。ただし、H3はこれからが勝負なのでしっかり育てていきたい」と語った。
国産主力ロケットの新規開発は1994年のH2以来。H3は2024年度中に退役予定の現行主力機「H2A」に代わり、今後20年間の日本の宇宙輸送の中心を担う。宇宙ビジネス拡大で需要が増す国際的な衛星打ち上げ市場で、競争力確保を目指す。
JAXAは14年からH3の開発を始めた。23年3月に初号機を打ち上げたが、電源系統の不具合で2段目エンジンに着火せず失敗。部品の絶縁を強化するなどの再発防止策を2号機に施した。
2号機はロケットの性能確認が主目的の「試験機」。JAXAによると、1、2段目のエンジンはともに正常に燃焼し、全ての衛星分離を確認できたという。
H3は全長約63メートル(2号機は約57メートル)、直径約5・2メートル。エンジンの推進力をH2Aの約1・3倍に高める一方、3Dプリンターを用いて部品数を減らすなどして低コスト化を図り、打ち上げ費用をH2Aの半額の約50億円に下げることを目指す。今後、JAXAの新型補給船「HTV-X」や火星衛星探査計画「MMX」などの重要ミッションで活用されることになっている。【田中韻】