能登半島地震で被災した石川県の一部地域で被災者生活再建支援給付を最大計600万円に倍増する政府方針について、千葉、新潟両県知事が意見表明していた問題で、富山県知事や、全国知事会の会長を務める宮城県知事からも「対象拡大」へ配慮を求める声が上がっている。給付増額は住宅再建支援策として期待される一方、対象地域を限定することには公平性の観点から課題が指摘されている。
「地域にかかわらず平等な支援が行われるよう特段の配慮を」
新潟県の花角英世知事は15日、新潟県も適用の対象地域とするよう求める要望書を政府に提出した。新潟市は液状化などで被災した住宅が1万棟を超えており、要望書は多くの高齢者の住まいが半壊以上の被害を受けたとして適用を求めている。
富山県の新田八朗知事も11日、公明党の山口那津男代表に対し、石川県以外にも適用するよう要望。全国知事会長の村井嘉浩・宮城県知事は13日の記者会見で「近県の被害地域にも光が当たるようにしてほしい」として配慮を求めた。
政府は現在のところ、対象地域を石川県以外に広げることは検討していないといい、武見敬三厚生労働相は13日の記者会見で、「ダメージの度合いは石川県が圧倒的に深刻だ」と述べ、石川県外に広げることは検討しない姿勢を示した。
野党の6日後に増額表明
被災者生活再建支援法に基づく現行制度では、住宅の被害状況などに応じて最大300万円を支給する。今回の地震では野党4党が1月26日、支援額を倍増させ最大600万円とする同法改正案を衆院に共同提出。岸田首相は6日後の2月1日、同額の増額方針を表明した。
岸田首相は5日には、高齢者・障害者世帯でなくても資金の借り入れや返済が困難な場合は、若者世帯も対象に含める考えを表明。16日に開かれた能登地震の復旧・復興支援本部会合で月内に具体策を決定するよう指示した。
「阪神」きっかけ議員立法
被災者生活再建支援法の制定は、平成7年の阪神大震災の際、公的助成を求める住民運動から始まった。「私有財産の形成に税金を投入すべきでない」との理由からなかなか認められなかったが、3年後の10年、議員立法で成立した。
当初は全壊世帯に最高100万円を支給するものだったが、16年の法改正で最大300万円に拡充。その後も、28年の熊本地震などで最大300万円からの増額を求める声があったが、財源の問題から実現しなかった。
こうした経緯もあり、千葉県の熊谷俊人知事は8日、東日本大震災や熊本地震など過去の災害との整合性について、公平性の観点から「なぜ能登半島地震の被災者にだけ、これだけ多額の税金投入がなされるのか」と疑問を呈した。
対象地域を線引きする理由として、政府は能登半島の高齢化率の高さや被害の深刻さ、半島という地理的条件による復旧の難しさを挙げ、あくまで「特例」としているが、今後、大規模災害が起きた場合も議論となるのは確実だ。