日ウクライナ会議、支援7分野は日本の技術力を前面に…戦闘収束見えず「ビジネス展開は難しい」

岸田首相は19日に東京都内で開催した「日ウクライナ経済復興推進会議」で、農業やバイオなど重視する7分野を示し、日本の技術力を生かした独自支援をアピールした。日本企業のウクライナへの投資を後押しする姿勢を前面に打ち出した形だが、戦闘収束が見えない中、課題は少なくない。
首相は基調講演の冒頭で、昨年3月のウクライナ訪問に言及し、「ゼレンスキー大統領から日本の持つ経験や技術、民間投資に対する強い期待を聞いた」と述べた。その上で、「『日本ならではの貢献』ができるはずだと考え、会議の開催を決めた」とも説明した。
首相の訪問後、林芳正外相(当時)のキーウ訪問に企業幹部でつくる「経済ミッション(派遣団)」が同行してニーズを把握するなど、支援策を模索してきた。日本はこれまでに約120億ドル(約1兆8000億円)を投じ、発電機の供与など、様々な支援も実施した。だが、米欧の軍事支援と比べれば、見劣り感が否めないとの指摘も出ていた。
日本政府は今回、復興に携わる日本企業を対象にしたキーウへの渡航制限の緩和を開始し、協力への「本気度」を示した。外務省を中心に慎重論もある中で、企業側の要望に沿った判断だった。政府が環境整備に注力したことで、日本の大手企業からスタートアップ(新興企業)まで、幅広い企業が会議に参加した。
農業分野では、クボタやヤンマーアグリなど6社がウクライナの農業政策・食料省と協力文書を交わした。農業大国ウクライナの復興には生産力の回復・強化は不可欠で、日本側が先進機材などを導入し、作物の収穫力や生産効率の向上を支える計画だ。
住友商事や川崎重工業、駒井ハルテックは、エネルギーや交通のインフラ(社会基盤)整備で現地企業と協力を始める。通信網を整備する「楽天シンフォニー」など、デジタル分野からの参加も目立った。
もっとも、戦争が続く中で、従業員の安全確保には依然として不安も残る。商社関係者は「侵略の行方が分からず、将来を見据えたビジネス展開は難しい」と打ち明ける。「ロシア政府を刺激するようなことはしたくない」(メーカー関係者)として、参入をためらう企業も少なくないとみられている。
日本政府は今後も、国内企業を後押しし、各企業が収益を見込める態勢づくりに取り組む必要がある。
情報保護協定の締結交渉開始へ…日ウクライナ首脳

岸田首相は19日、首相官邸で、ウクライナのデニス・シュミハリ首相と個別に会談した。両国関係をさらに強化するため、安全保障に関する機密情報の交換を可能とする「情報保護協定」の締結に向けた交渉を開始することで合意した。

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