4・28補選の細田博之前衆院議長“弔い合戦”で自民候補が想定外の伸び悩み 竹下登、青木幹雄の「保守王国・島根」が崩壊する

ニュースは政治倫理審査会の話題で持ちきりだが、永田町筋では4月28日に投開票となる3つの衆議院補選に注目が集まっている。自民党の派閥の裏金問題で議員辞職した谷川弥一氏の後任を選ぶ長崎3区では「不戦敗」も囁かれていたが、候補者擁立へと転じた。背景には、自民党が背に腹はかえられない苦境に追い込まれる“誤算”があった。
補選が行なわれるのは長崎3区のほかに、東京都江東区長選をめぐって柿沢未途・法務副大臣(当時)が公職選挙法違反の罪で起訴され、辞職した東京15区と細田博之・前衆院議長が死去したことを受けた島根1区の2つ。
「想定外となっているのは島根1区補選に党島根県連が擁立した候補の伸び悩みです」と自民党関係者が明かし、こう続ける。
「1月の県連の選挙対策委員会で候補に選ばれたのは、新人の錦織功政・元財務省中国財務局長(54)でした。亡くなった細田氏は旧統一教会との関係が報じられながら、記者会見でもほとんど説明をしないままだった。そうした過去との決別を示せる元官僚ということで白羽の矢を立てたのです。ところが……なかなか支持が広がりそうにないんです」
錦織氏の出身母体である財務省の関係者が補う。
「錦織さんは、首相最側近の木原誠二・党幹事長代理、国民民主党の玉木雄一郎代表と同じ平成5年(1993年)入省組。地元・松江市出身ではあるのですが、キラ星のごとく俊才が居並ぶ同期のなかでは、ほとんど目立たないタイプでした」
大物が相次いで死去
本人の知名度はこれから次第の問題かもしれないが、神輿を担ぐ党県連も一枚岩にはなれない事情がある。
「島根県は中選挙区時代に故・竹下登元首相が強固な後援会組織を張り巡らせてきた保守王国で、55年体制発足以降、一度も野党にトップ当選を明け渡したこともありません。ただ、小選挙区になって以降はその地盤も元首相の弟、故竹下亘氏の2区と細田氏の1区に分かれ、なかなか一つになれない」(前出・自民党関係者)
5年前までは元大物財務官僚の溝口善兵衛・県知事が国と地方をつなぐ役割で存在感を示していたが、溝口氏の引退を受けて行なわれた2019年の前回知事選では、国会議員団と県議団が異例の対立を見せた。後者が推す元総務官僚の丸山達也・現県政が誕生したものの、その丸山氏は東京五輪の聖火リレー中止検討を求める表明をして注目を集めるなど、自民党政権とは距離を置く姿勢を鮮明にした過去もある。
「それでも、竹下系の青木幹雄氏と細田氏という2人の大物政治家がいることで一定の求心力を保ってきたのですが、昨年その2人が相次いで亡くなった」(前出・自民党関係者)
結果、保守王国の結束はいつの間にか取り繕うことができないほど綻びが広がっているようなのだ。
錦織氏を迎え撃つのは、亀井久興氏(元国土庁長官)の娘で、立憲民主党の亀井亜紀子元衆議院議員。2021年の前回衆院選でも、細田氏を相手に4割得票しており、補選ではさらに票が上積みされる可能性がある。
4月28日の結果しだいでは、自民党内に岸田降ろしの機運が高まるともいわれる。裏金問題を通じて安倍派幹部らの発言力を削ぐことに成功した岸田氏だが、次は岸田政権の基盤が揺らぎかねない窮地となっている。

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