その古文書捨てないで!…被災住宅の片付けで発見、江戸時代の「たからもの」も

能登半島地震で被害を受けた石川県能登町が、被災した住宅などの片付けで発見した古い文書を処分しないよう町民に呼びかけている。江戸時代のものとみられる文書が見つかった家もあり、町の担当者は「捨ててしまうと地域の歴史を知る手段が永遠に失われてしまう」と周知を急ぐ。(菊池蓮)
「江戸時代くらいのものとは思っていたが、私が見てもよくわからなかった」。同町宇出津山分の無職、久田万寿夫さん(68)は、所々が破れて古ぼけた2冊の紙の束を手にする。震災後、自宅の片付け中に2階の屋根裏から見つけたものだ。
以前から存在は知っていたが、何が書かれているかは分からなかった。処分することも考えていたが、古い文書の保存を呼びかける町の臨時広報を目にし、同町教育委員会に連絡した。町教委の寺口学学芸員(35)が文書を確認したところ、地域の年貢に関する江戸時代後期の文書とみられることが分かった。久田さんは「少しでも役に立つものがあれば、町のために使ってほしい」と話した。
約7500棟の建物が被害を受けた同町では、同様に片付け中に歴史的な資料が見つかる可能性がある。一方で、価値が分からず捨てられたり、古本屋に売られたりすることも危惧されている。
町では歴史を伝える資料が失われないよう、1月中旬からチラシなどで「地域の貴重な『たからもの』を捨てないで!」と町民に呼びかけている。2月に入り、久田さんのほかにも「地震で地域の仏像が壊れてしまったがどうすれば良いか」など、複数の相談が寄せられているという。この取り組みで、捨てられずに相談に至った歴史的資料は10件ほどあるという。
寺口学芸員は「『こんな時に』と思うかもしれないが『あの時捨てていなければ』と後悔しないためにも、古い資料を見つけたら連絡してほしい」と話している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする