「岸田総理は6月に賭けている」“二階派の異端児”細野豪志が読み解いた政権浮揚シナリオ《減税+賃上げで歴史的成果?》

「(6月に)賃上げに減税を加えれば、物価を上回る所得増になる可能性が高い。岸田総理はそこに賭けたんじゃないかと。実は戦略的に焦点を合わせてきている」
こう岸田総理の戦略を読み解くのは、自民党の細野豪志衆議院議員。かつて民主党、民進党のプリンスと呼ばれ、環境大臣や幹事長も歴任したが、希望の党、無所属を経て2021年11月に自民党に入党した。そんな細野氏が文藝春秋ウェビナー「 青山和弘の永田町未来caf 」に出演し、自民党の裏金問題の受け止めや岸田総理の解散戦略について語った。
二階氏の説明責任は「これ以上言う気にはならない」
「私には見えてなかったのでびっくりしました。政治資金に使うのであれば、逆に裏金にすると使いにくいんですよ。人件費や家賃に使えるわけでもないですし」
派閥パーティー券の裏金問題について、驚いたと話す細野氏。政治資金は年間4千万円程度あれば十分だと話す。
「地元に2つ事務所を構えて家賃と人件費で、ざっくり4千万円くらいは掛かります。これをパーティーやめて2千万円にしろと言われると、人を削って議員活動を縮小せざるを得ない。でも逆に4千万以上必要かって言うと、それ以上やっても際限がないんですよ」
細野氏が所属していた二階派の二階元幹事長については、裏金問題で秘書が立件されたことに加えて巨額の政策活動費の問題も浮上し、国会で説明責任を果たすべきだという声は根強い。筆者がこれを質すと、細野氏は否定的な考えを示した。
「私は無所属で一番厳しいところで(二階氏に)拾ってもらったから、大きな義理がある。二階さんは派閥の会合で我々に対しては頭を下げたんで、これ以上言う気にはならない。記者会見は一度やっていますしね」
一方で細野氏は、秘書が立件されれば政治家も公民権停止などの罰を受ける連座制を政治資金規正法にも導入することについては、「時代の流れでやむを得ない」と話す。ただ細野氏はその場合の懸念を率直に語った。
「(政治家が政治資金の)出納を一つ一つ完全にチェックすることはできません。なので連座制を適用するということは、秘書に命を預けるということです。万が一裏切られたりおかしなことをされたら、俺は腹を切るということです。そういうことだということは分かって欲しい」
6月に所得増で解散?
岸田総理はこの裏金問題で支持率低迷に喘いでいるが、細野氏は岸田総理が政権浮揚の焦点を「6月に合わせている」と話す。
「なぜ所得税と住民税の減税を今年の6月にしたかというと、(春の)賃上げで勤労統計が出るのが6月の頭なんですよ。そのタイミングで減税をぶちこめば、物価を上回る所得増になる可能性が高い。平成の三十数年のデフレを止める歴史的な成果を出すんだと」
であれば、岸田総理は6月に衆議院解散を考えているのでないか。細野氏は「9月(の自民党総裁選)はまったく見通せない状況なので、いろいろな選択肢を持っているのかも知れない」と語った。ただ賃上げだけで、自民党に追い風が吹くとは思えないとの考えを示した。
「選挙は高齢者の影響がものすごく大きいんですが、賃上げしてもすぐに年金はあがらない。むしろ物価が上がると、年金生活者は生活が厳しくなってくるんです。そうすると『賃上げ出来ました、これが成果です』って言っても、高齢者は冷ややかに見る可能性がある」
「総理を替えてきて、自民党はろくなことにならなかった」
自民党内には、次の総選挙は岸田総理ではなく新たな総理大臣の下で行うべきだという声も強まりつつある。その点に話が及ぶと、前回の総選挙を無所属で勝ち上がってきた細野氏らしい、強気な姿勢を見せた。
「(岸田総理が)経済に賭けていることを考えれば、4月の賃上げ、夏ごろの経済状況を見ないと政権の評価は定まらないと思います。結構いい数字が出てくる可能性があるので、まだポスト岸田を語るのは早いと思います。あと、選挙は(政党の顔である総裁がやるのではなく、個々の政治家が)自分でやるんです。そこは甘えちゃいかん。支持率が落ちたからって総理替えてきて、自民党はろくなことにならなかったわけだから」
こうした状況の中で細野氏は、かつて所属していた野党をどう見ているのだろうか。
「2015年(の安全保障関連法を巡る野党共闘)くらいから状況は変わっていなくて、小選挙区で勝つためには自民党(支持)でない人を全部束ねなければいけないという発想に立っている。歯を食いしばって共産党及びそれに類する左派の人たちはご遠慮願って、残りの8割のうちの半分を取りに行くという勝負をするなら野党にも目がある。でも『(左派の)2割も取らないと過半数は取れない』という議論をまだしている。
もうあれから9年経っている。2015年の安全保障の状況は、今からみるとまだ平和だったんです。野党には優秀な人も多いし、魅力的な人もいると思うけど、今の状況で野党が塊として政権運営できるかというと、正直厳しいと思います」
細野氏はベテラン議員と言っていい当選8回を数えるが、まだ52歳。自民党議員として今後どのような活躍の場があるのか。政治とカネを巡り永田町の混迷が深まる今、細野氏の真価が問われることになるだろう。

細野氏が出演した、文藝春秋ウェビナー「 青山和弘の永田町未来caf 」は、「 文藝春秋 電子版 」で見ることができる。
(青山 和弘/文藝春秋 電子版オリジナル)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする