ブタ臓器「異種移植」、国内の複数医療機関が計画…サル移植実験を年内にも

ブタの臓器を人に移植する「異種移植」を巡り、国内の複数の医療機関が臨床応用に向けた準備を進めていることがわかった。今年から来年にかけ、ブタの腎臓や心臓、 膵臓 の組織などをサルに移植する実験を開始し、数年以内に人への応用を目指す。
移植には、人に移植した際に起こる強い拒絶反応を回避するため、遺伝子改変したブタを用いる。明治大発の新興企業「ポル・メド・テック」が今月、米バイオ企業が開発した細胞を使った遺伝子改変ブタを3頭誕生させた。今後さらに生産数を増やし、異種移植を研究する国内医療機関に提供する予定だ。
そのうち京都府立医科大や鹿児島大のチームは今夏にも、ブタの腎臓をサルに移植し、数年以内の臨床研究の実施を目指す。治療対象は、免疫の状態が原因で通常の腎臓移植を受けると拒絶反応が起きてしまう患者を検討している。遺伝子改変したブタの臓器なら、移植できる可能性があるという。京都府立医大の奥見 雅由 准教授(泌尿器科)は「腎臓移植を辞退せざるを得なかった患者に、新たな選択肢が生まれる」と期待する。
福岡大の小玉正太教授(再生移植医学)らも今夏頃、ブタの膵臓に含まれ、血糖値を下げるホルモンを分泌する「 膵島 」という組織を、サルに移植する試験を行う。2年後には、1型糖尿病患者を対象とした臨床研究につなげる計画だ。
ブタ心臓の移植を目指すのは大阪大の斎藤俊輔特任准教授(心臓血管外科)らだ。早くて来年、サルにブタ心臓を移植する。国内では、心臓移植までの平均待機期間は約5年にのぼる。その間に亡くなる患者も多く、斎藤特任准教授は「異種移植は補助人工心臓では救命できない患者を救うために必要な手段だ」と話す。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする