交流サイト(SNS)やマッチングアプリで恋愛感情を抱かせ、現金をだまし取る国際ロマンス詐欺の被害が急増している。犯行手口も巧妙化しており、奈良県警は「SNSで知らない人からメッセージが来て、投資やうまい話を持ちかけられた際は詐欺を疑って」と呼びかけている。
「やりとりに心を動かされてしまった。周りが見えていなかった」。国際ロマンス詐欺で現金650万円を失った奈良県生駒市の40代女性は、当時の心境をこう語った。
女性に連絡があったのは昨年7月。《偶然あなたの投稿を見つけて、とてもすてきだと思いました》。東京で土壌の研究をしているという40代米国人男性を名乗るアカウントからメッセージが届いた。
男には6歳の娘がいるといい、小学生の子供がいるシングルマザーの女性と話がはずんだ。「何でも共感してくれて毎日やりとりしていた」。男から結婚を切り出され、自分の子供にきょうだいができることを夢見た。
そのうち男から先物取引の投資を持ちかけられた。断ったが「経済力がないと家族が納得しない」と言われ、紹介された投資サイトで取引を始め4回にわたって計650万円を振り込んだ。
詐欺に気付いたのは約1カ月後。パートナーができて投資を持ちかけられたことを親友に相談すると「それは詐欺。即警察に行きなさい」と言われた。相手が送ってきた娘の写真は全く別人だと判明した。「嘘は嫌いだからやめてね、とずっと言っていたが、それを承知でだましていたと思うと悲しさしかない」
一方、奈良県田原本町の60代男性はSNSで軍医の外国人女性を名乗る人物に助けを求められ、荷物の輸送費97万円を依頼された。高額な費用を不審に思って県警に相談し、被害を免れたといい、「まさかだまそうとしていると思わなかった。知らない人やどこに住んでいるか分からない人と友達になったらあかんなと思った」と振り返った。
県警生活安全企画課によると、国際ロマンス詐欺は被害者と対面することなく、メッセージのやり取りで犯行が進むため、犯人の特徴をつかみにくく捜査が難しいという。振込口座も不法に売買されたものが使われるケースが多く、頻繁に指定口座が入れ替わるため特定が困難という。
同課は「まずは一人一人が注意し、SNS上で金の話が出たときは詐欺を疑ってほしい」と呼びかけた。
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県警は、令和5年に認知した国際ロマンス詐欺と、SNS上で知り合った相手に虚偽の投資話を持ちかけて現金をだまし取る投資詐欺の合計が、前年比63件増の計81件に上ったと発表した。被害額も計13億1858万円(前年比10億4689万円増)と急増しており、県警は注意を呼びかけている。
内訳は国際ロマンスが前年比15件増の25件で被害額計3億8029万円、投資詐欺が同48件増の56件で同計9億3829万円。
勧誘方法はSNSが最も多く、57件を占めた。他はマッチングアプリ13件▽ネット広告9件▽その他2件-だった。男女別は男性33人、女性48人。年代別では50代が最も多く23人で、40代22人▽60代14人▽70代13人-と続いた。特殊詐欺に比べ、若い年代の被害が目立った。
県警によると、今年に入ってからも1月時点で前年同月比11件増の12件が発生し、計7201万円の被害が発生している。
(秋山紀浩)