札幌すすきの殺人事件 親子ら起訴受け札幌地検が取材応じる 元検事が解説&司法キャップ今後の論点を整理

立田祥久記者)
「先ほど3人の起訴を受けて札幌地検が取材に応じました。まず、娘の瑠奈被告について最大の争点となったのは、刑事責任能力を問うことができるかという点です。起訴したということは、刑事責任能力があると札幌地検は判断した形ですが、詳しい中身については明らかにされませんでした。ただ、起訴内容を見てみると、切断した男性の頭部をキャリーケースに入れて運んだこと。また、ホテルの近くに停車させていた修被告の車で自宅に戻るなど、刑事責任能力を裏付けるだけの計画性が確認されたと見られます」。
依田英将アナウンサー)
「父親と母親の起訴内容についてはいかがでしたか」。
立田記者)
「はい修被告については殺人のほう助罪などで、浩子被告については死体損壊のほう助罪などで起訴しました。殺人罪の適用は見送った形です。その理由について問うと、起訴した内容については立証できるだけの証拠が集まったと述べるにとどめました。つまり、裏を返すと殺人を立証するだけの証拠が集まらなかったということになります」。
依田アナウンサー)
「親子3人ですが、これはいずれも殺人の容疑で逮捕されていたんですが、6日の起訴段階で殺人の罪に問われたのは瑠奈被告だけとなりました。この背景について、元検事の弁護士に話を聞いてみます」。
シティ総合法律事務所・中村浩士弁護士)
【瑠奈被告の責任能力について】
瑠奈被告は自分で殺害を実行していますので、精神鑑定の結果、責任能力に問題がない、十分罪は問えるという内容だったのだろうと思います。
【父・修被告の「殺人」ほう助など】
父親に関しては殺人等でのほう助罪。瑠奈被告の犯行を手助けするという内容での起訴にとどまりましたが、殺人等を自分の犯罪として自分が積極的に望んで自分のためにやったというのが共同・共謀正犯。そこまでの証拠は集めることができなかった。やはり瑠奈被告の犯行を容易にした手助けをした、この限度でしか立証できないと。ただ、逆に言えば瑠奈被告が殺意を抱いていたことは立証が可能だというふうに判断しての(殺人ほう助での)起訴内容だと思います。
【母・浩子被告の「死体遺棄ほう助」について】
母親に関しては、やはり瑠奈被告の殺害行為の時点での殺害の意思。これを問う証拠が集まらなかったというところから、死体遺棄のみでの起訴にとどまったのかなと思います。
依田アナウンサー)
「この事件ですが、起訴までおよそ8カ月もかかっています。もう一度逮捕からの経緯を説明します。田村親子3人が逮捕されたのは、事件からおよそ3週間後の去年7月でした。容疑は死体損壊などでした。さらに、およそ3週間後の8月、3人は殺人の疑いで再逮捕されました。そして同じ8月、鑑定留置が始まり、その期間は年をまたいで先月28日まで及びました。実に6か月もの鑑定留置を終えて6日、札幌地検は3人を起訴しました。
改めて鑑定留置とはというところを見ていきましょう。鑑定留置とは精神障害の疑いなどで刑事責任能力を問えるかどうか、つまり処罰の対象になるかどうかを確かめるために容疑者を病院などに留め置く手続です。医師による精神鑑定などの結果を踏まえて、検察が起訴するかどうかを判断することになります。期間は通常ですと大体2カ月から3カ月程度とされています。6カ月というのは異例の長さともいえまして、例えば他の鑑定留置の例を見てみますと京アニ放火殺人事件の青葉被告はおよそ6か月、そして安倍元総理銃撃事件の山上被告はおよそ5か月半でした。
鑑定留置の期間で比較しますと今回のすすきのの事件。これらの重大事件に匹敵する長さだったことがわかります。そしてこの事件に関しては、今後は裁判で審理が行われることになりますが、ではその裁判でどのような内容が争われるのでしょうか。再び中継で立田さんお願いします」。
立田記者)
「裁判では、両親がどこまで事件に関わっていたのかというのが争点になりそうです。去年9月に行われた鑑定留置理由の開示手続きで、修被告と浩子被告はやっていないと否認しています。また、瑠奈被告の刑事責任能力について検察は起訴したものの、裁判所がどう判断するかというのもポイントになります」。
依田アナウンサー)
「一方で、被告側の弁護人は立田さん、どう受け止めているんでしょうか今回の処分を」。
立田記者)
「両親の弁護人に話を聞くことができました。二人が否認を続けていたということもあり、昨日まで不起訴を信じていたということです。ただ、今回の起訴を受けて今後は裁判に向けてやっていくだけだと話していました」。

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