ニュース裏表 安積明子 流布する岸田首相「訪米後の退陣説」 混乱する党政局、ガバナンス欠如は深刻に 政倫審めぐる茂木氏の沈黙は〝意趣返し〟か

「4月の訪米後に岸田文雄首相は退陣するのではないか」「その後、上川陽子外相が首相に就任し、9月の自民党総裁選まで務める」
永田町周辺でこんな噂が流布している。発信源は自民党内のようだが岸田首相の〝意欲〟は衰えていないようだ。
自民党の政治資金パーティー裏金事件が大炎上するなか、岸田首相は現職首相として初の政治倫理審査会出席を表明した。公開を求める野党側と、渋る自民党の間で調整が難航したが、岸田首相は「全面公開」に踏み切る。公開に否定的な安倍派(清和政策研究会)幹部らを公開の場に引き出し、リーダーシップも示そうとしたのだろう。
だが、成果は乏しく、〝墓穴〟を掘った節さえある。
岸田首相は、今国会で野田佳彦元首相に「2022年に7回もパーティーを開いた」「異常なパーティー好き」などと猛批判を受けた。
岸田首相は「勉強会」と説明したが、政倫審でも追及は続いた。野田氏から「多額の収益を得たパーティーに該当し、大臣規範にも抵触する」と指弾され、「首相在任中はパーティーを開催しない」と約束せざるを得なかった。
一方、肝心のパーティー収入のキックバックや、裏金化の経緯は闇の中だ。いずれの出席議員も事務方の責任を強調し、不関与を主張した。
まさに、「大山鳴動して鼠一匹」の様相だが、さまざまな問題も見えてくる。
1つは、自民党の「ガバナンスの欠如」だ。政倫審は原則非公開だが、非公開だったのは1991年の共和汚職事件で加藤紘一氏が出席した最初だけだ。それ以外は、何らかの形で公開されてきた。
そもそも、「一般にも議員にも公開せず議事録も非公開」では、何のための政倫審なのか分からない。
岸田首相は当初、全面公開を求める野党側に対し、「政倫審は原則非公開」と繰り返した。水面下で安倍派幹部らに公開の場への出席を求めていたとしても、これでは説得力があるはずがない。
さらに問題なのは茂木敏充幹事長だ。幹事長は首相を兼ねる総裁に代わり、党務を取り仕切る。政倫審出席を渋る議員らの説得は本来、幹事長の役割のはずだが、茂木氏が動いた形跡はない。
背景には、岸田首相への〝怨念〟が指摘されている。
1月18日、岸田首相が自身の率いた岸田派(宏池会)解散を表明すると、呼応するように茂木派(平成研究会)に所属する小渕優子選対委員長らが相次いで離脱した。9月の総裁選への出馬を狙うとされる茂木氏には、離脱は大きな痛手だ。
政倫審をめぐる茂木氏の沈黙は〝意趣返し〟と見る向きも少なくない。そうだとしたら、「右腕」の選任を間違った、岸田首相のガバナンスの問題ともいえる。党を治めることができずして、国を治めることができようか。 (政治ジャーナリスト・安積明子)

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