かつては宝塚歌劇団、星組の男役として活躍し、現在は脚本家としてさまざまな舞台を手がける元タカラジェンヌが、詐欺の容疑で逮捕された。大阪府警吹田署は3月7日、土地取引で多額の金が手に入るなどのウソをつき、兵庫県宝塚市の70代女性から現金2000万円をだまし取ったとして、吹田市のイベント会社「アレキサンドライト」社長の岡部由美(67)容疑者らを詐欺の疑いで逮捕した。
「2000万円は受け取ったが、だまし取ったつもりはない」
岡部容疑者は、所有していない土地を自身が代表を務めるイベント会社「アレキサンドライト」が所有しているように装い、兵庫県宝塚市に住む70代女性から現金2000万円をだまし取った疑いが持たれている。
2017年7月、岡部容疑者から「5000万円以上の価値がある土地を担保に渡すので金を貸してほしい」などとウソの話を持ちかけられて金を貸した被害女性が、いつまで経っても返済がないことを不審に思い、府警に相談したことで事件は発覚。今月7日、大阪府警吹田署は岡部容疑者の逮捕に踏み切った。社会部記者はこう解説する。
岡部容疑者
「被害女性は宝塚歌劇団のいわゆる『タニマチ』的な存在。岡部容疑者が宝塚歌劇団を退団した後に知り合い、今回の話を持ちかけた。また、岡部容疑者のイベント会社は資金繰りに苦しんでいたようで、だまし取った金は自社の運用資金に充てたとみられている。警察の調べに対して『2000万円は受け取ったが、だまし取ったつもりはない』と容疑を否認しているが、警察は余罪もあるとみて捜査をすすめている」岡部容疑者は宝塚歌劇団、星組の男役として1974年に初舞台デビュー。同劇団を卒業後も、宝塚OGのコンサートやショーの企画や演出を行なっており、業界内では知られた存在だった。
宝塚大劇場(撮影/集英社オンライン)
「岡部容疑者は宝塚歌劇団の60期生で『宮つかさ』という名前で活動。同期には元花組トップスターで女優としても活躍した大浦みずきさんや、元月組トップスターの剣幸さんなど多くの有名人がいる。岡部容疑者自身も、1977年に引退した後は『岡部優妙』という名前で演出家として活動し、2011年に独立。宝塚OGのさまざまなコンサートやショーを手がけていて、宝塚ファンにとっては、演者ではなく演出家として有名だった」(演劇ライター)
宝塚退団後はダンス教室をオープン
「アレキサンドライト」は、岡部容疑者の地元、大阪府吹田市のマンションの一室にオフィスを構えるイベント会社。国内だけにとどまらず、過去には「中国公演 剣と愛の光芒~ナポレオンを愛した女たち~」の演出と脚本を手掛けており、3月16日からは大阪府の泉佐野オチアリーナにて「命もゆる夕映えー大津皇子散華抄ー」の公演も控えていた。
3月には舞台も予定されていた(岡部容疑者が社長を務める会社「アレキサンドライト」HPより)
「岡部容疑者は”演出家”として、メディアなどのインタビューにもたびたび出演していて、宝塚歌劇団OGからの信頼も厚かった。先月16日にも、OGたちのブログに岡部容疑者の誕生日会の様子がアップされていただけに関係者のショックも大きいだろう」(同)昨年9月に起きた、現役タカラジェンヌの飛び降り事件に続き、宝塚ファンの間にまたもや衝撃が走った今回の事件。逮捕された岡部容疑者は、自身が代表を務めるイベント会社の近くのデザイナーズハウスに一人で住んでいた。近隣に住む交流のあった40代の女性も「えー、なんじゃそりゃ!」と逮捕のニュースに驚きの声をあげたという。「岡部さん一家はおよそ40年ほど前にここに引っ越してきたようで、当時まだ小さかった私にとっては、由美さんは近所の優しいお姉さん的な存在でした。由美さんは宝塚歌劇団を卒業したあとにこの家(実家)に戻ってきたのですが、やはり男役として活躍していただけあって、いつもバシッとキメた恰好で『かっこいい女性』というイメージでした。私が小学生のとき、『同期がいるからチケット取ってあげようか?』と宝塚の公演に招待してくれたこともありました…」
「宮つかさ」として活躍していた岡部容疑者(宝塚歌劇団の刊行物より/読者提供)
この女性によると、岡部容疑者は宝塚歌劇団を卒業後、地元(大阪府吹田市)でダンス教室を開いた。元タカラジェンヌが指導してくれるとあって、当時は小学生から中高年まで幅広い世代の生徒たちで賑わっていたという。「由美さんに『ダンス教室の発表会があるから、よかったら見にきてね』と言われたり、『スタッフが足りないから発表会手伝ってくれない?』と頼まれたこともあって。生徒さんに慕われていて『いい先生』って感じでした。私自身も、由美さんのダンス教室の体験に行ったことがあるのですが、あまりのレベルの高さに挫折して入るのをやめました」(同)
「着ているモノも上品で、まさかお金に困っているとは…」
評判のダンス教室を営んでいた岡部容疑者だが、20年ほど前から姿を見かけることは少なくなっていったという。「ある時期から、由美さんは朝早くに家を出たり、夜遅くに帰ってくるようになりました。その後、由美さんのご両親が亡くなってからはご近所付き合いも減ったのですが、ある日テレビで『岡部優妙』という名前でインタビューを受けていまして。以前から由美さんが演出家をしていることは知ってましたけど、宝塚OGのイベントを企画する会社の社長だということを知って『えー! 今こんなんやってんねや!』と驚きましたね」
大阪府警本部
岡部容疑者は会社の資金繰りに苦しんで事件を起こしたとみられているが、この件についても女性はこう語る。「ここ数年の間も、由美さんは『この前は長崎に行ってたの』と話すなど、しょっちゅういろいろなところに出かけていたようだったので、仕事がなかったとは思えないし、会社のスタッフらしき男性が車で送り迎えしている光景も見ていました。由美さんは着ているモノも上品で、まさかお金に困っているとは思えなかった」宝塚音楽学校の校訓は「清く正しく美しく」。元タカラジェンヌの女性が逮捕された背景には何があるのか。捜査の進展が待たれる。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
※「集英社オンライン」では、今回の事件について情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news