千葉県東方沖などを震源とする地震が2月下旬以降に相次ぎ、千葉県内のスーパーなどでは水や非常食などが売れている。発生から13年となる東日本大震災の節目が近づいていることや、1月の能登半島地震も影響しているとみられる。東日本大震災時の品薄などを踏まえ、各店舗は在庫を確保しているといい、ある店の担当者は「慌てて購入しなくても、商品は十分にある」と話している。(石本大河)
「千葉でも揺れを感じることが多くなった。いつ大きな地震が起こるかわからないので、水などを買いに来た」。総合スーパー「イオンスタイル幕張新都心」(千葉市美浜区)で7日、習志野市の男性(75)は、飲料水のペットボトル6本が入った1箱を買い物カートに積み込んだ。1本は2リットル、計12リットル分だ。
元日に起きた能登半島地震で、被災者が水不足で困っているのを知った。それ以降、水や簡易トイレ、ティッシュ、安全靴などの防災グッズを少しずつ、買い足している。
2020年のコロナ禍では、紙製品が不足するといううわさが流れ、トイレットペーパーの欠品が相次いだ。購入に苦労した経験から、今回も心配していたという。7日の買い物では、予定通りに水を買うことができ、「品ぞろえも量も十分だった」と安心した表情を見せていた。
県内でスーパーを運営する複数の会社によると、県内では最近、飲料水や非常食などの需要が増えている。
スーパー大手のイオンリテール(千葉市)によると、地震が相次いだ2月下旬~3月上旬、県内42店舗の売上高は、飲料水が前年同期の1・3倍、非常食は1・8倍に増えた。
「水を箱で買う人やカップ麺などの非常食を求める人が顕著に増えている」と話すのは、食品スーパー「せんどう」(市原市)の担当者。「東日本大震災の節目が近づいていることもあってか、防災意識が高まっている」と推察する。
東日本大震災やコロナ禍で生活必需品の品薄が起きた経験から、各店舗は在庫を増やすなどして欠品対策を進めている。
イオンリテールの店舗では、新型コロナウイルスが流行し始めた20年3月頃、トイレットペーパーやティッシュなどの買い占めが相次いだ。品薄や売り切れの様子がSNSなどで投稿され、「品薄がエスカレートした」(担当者)という。
「一度でも品薄状態にならないようにする」。同社は今回、こうした考えに基づき、一部の店舗で水の在庫を普段の約1・5倍確保した。品薄が品薄を呼ぶ悪循環を防ぐためだ。
同志社大の 中谷内 一也教授(社会心理学)は、「災害時などの生活必需品の欠品や品薄は、製造元から届いていないだけで、数自体は十分にある場合が多い」と指摘する。しかし、売り切れなどの情報を聞いた消費者が一斉に購入に走ると、品薄を助長してしまうといい、「慌てて大量購入するのは避けるべきだ」と注意を促す。
非常食などの備蓄方法として、中谷内教授は「ローリングストック」を推奨する。必要な分だけ購入し、使ったら補充するものだ。「防災意識が高まっているこの機会に、始めてみては」と話している。