サイト広告使った投資詐欺 和歌山でも多発、1~2月被害1.4億円

「投資に興味がある人は、LINE(ライン)で友達追加してください」。インターネット上で目にしたこんな広告から、投資詐欺に遭う被害が和歌山県内でも多発している。広告には実在する経済アナリストや実業家の写真が並び、20代をはじめとした若年層も被害に遭うことが特徴だ。勢いを増す投資ブームや株高で、さらに被害が深刻化する恐れがある。【安西李姫】
偽アプリに誘導
県警によると、今年1~2月に確認された特殊詐欺の被害件数は28件(被害総額約1億5600万円)で、このうち16件(同約1億4400万円)が投資詐欺と危機的な状況だ。被害に遭った年代は20~70代と幅広く、高齢者をターゲットとしたこれまでの特殊詐欺とは態様が異なっている。
和歌山市の60代女性は昨年12月、「投資に興味がある人」と書かれた動画サイトの広告をクリック。指示通りに「まついゆうこ」と名乗る人物のラインを友達登録すると、株価を予想するグループに招待された。書かれた内容に従って株を購入すると実際にもうけが出たといい、安心した女性は1月29日に暗号資産を送った。
さらに利益を増やそうと、指示通りに米投資企業ファンドをかたったアプリをダウンロードして、2月中旬にかけて取引を継続。ビットコインなどの暗号資産約1400万円と現金1600万円を複数回に分けて送った後、突然その全てが没収されたという。「追加で1500万円を払えば倍増する」との誘いで不審に思い、詐欺と気付いた。
県警生活安全企画課の担当者は「実際にアプリを使って利益が出たり有名人の顔が出てきたりするなど、投資に意欲のある人を信じ込ませる仕掛けになっている」と指摘。アプリ上では利益が上がっているように見えても、偽の画面にすぎない可能性があるという。「簡単に稼げるSNSの投資話には気をつけてほしい」としている。
啓発にひと工夫
県警は被害防止に向け、新たな水際対策にも乗り出した。県内全域にある金融機関のATM(現金自動受払機)に置いてもらう、注意喚起のフロアマット900枚を作成。和歌山大観光学部の北村元成教授(観光デザイン)に協力を依頼し、約半年かけてより効果的なデザインとなるよう工夫を凝らしたという。
踏切などに使われる「警告色」の黒と黄色を使ったほか、「ちょお待って!」と和歌山弁をあしらったことで見た人の興味を誘う。北村教授は「注意喚起のポスターはたくさん貼ってあるので通り過ぎやすいが、足形があれば思わず立つ人も多く、待ち時間にも目がいきやすい」と期待。直接口座に振り込む手口に対応するだけでなく、誰もが日常的に使うATMで目に触れてもらうことが狙いだ。
5日に和歌山市の紀陽銀行本店であった贈呈式には、県警特殊詐欺被害防止広報大使のロックバンド「キュウソネコカミ」が登場。ボーカル・ギターのヤマサキセイヤさん(36)=御坊市出身=が「相手はあの手この手でもうけようとしてくる。1回立ち止まり、だまされないで」と訴えていた。
相談窓口
県警の相談ダイヤル「ちょっと確認電話」(0120・508(これは)・878(わなや))▽消費者ホットライン(局番なしの188)。

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