白い機体は、打ち上げから数秒後に爆発して飛散した――。13日午前、宇宙関連の新興企業「スペースワン」(東京)が和歌山県串本町の発射場で行った民間小型ロケット「カイロス」初号機の打ち上げは、失敗に終わった。発射を見届けようと、現地周辺に集まっていた見学者らは言葉を失い、巻き上がる白煙を見つめた。
ロケットは午前11時過ぎの予定時刻に、海沿いの発射場「スペースポート紀伊」から発射された。オレンジ色の炎を上げて上空に向かい始めたが、数秒後に機体が炎に包まれ、白煙が広がった。
破片の一部は発射場付近の林野に落下し、周囲では火災が発生。発射場では消火システムが作動し、放水が始まった。
スペースワンは「飛行中断措置が行われた」と説明。打ち上げ時には発射場周辺の半径1キロ圏内を立ち入り禁止としており、消防などが現地に向かっている。
発射場から約2キロ離れた2か所の公式見学場のうち、串本町の田原海水浴場では、住民らが打ち上げの瞬間を 固唾 をのんで見守った。「ドン」という音が響くと同時に白煙が立ち上ったが、機体は見えなかった。数分後に「失敗したようです」とアナウンスが流れると、会場からため息が漏れた。
カイロスを応援する住民有志でつくる「和歌山ロケット応援団」団長の青木圭さん(47)は、ぼう然としていた。
応援団は2022年10月、地元住民ら約30人で発足。公式見学場の海岸周辺を月1回掃除したり、児童らと一緒に、スペースワンの職員に応援メッセージを届けたりしてきた。青木さんは「ショックは大きいが、次につなげてほしい」と声を振り絞った。
串本町に隣接する和歌山県那智勝浦町の旧町立浦神小学校に設けられた見学場でも、県内外のロケットファンが見守った。
埼玉県三郷市から夜通し車を走らせてきた会社員男性(44)は、鹿児島県や北海道での打ち上げを30回近く見学した経験のある大のロケットファン。「最初は失敗がつきもの。これを糧にして成功に結びつけてほしい」と話した。