自宅の網戸のひもが首に引っかかって女児(当時6歳)が死亡した事故を巡り、40代の両親らが製造元のアルミ建材大手「YKK AP」(東京都千代田区)とリフォーム業者「土屋ホームトピア」(札幌市)に計約8000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が14日、大阪高裁であった。黒野功久(よしひさ)裁判長は、両親らの請求を棄却した1審判決を変更。「製品に欠陥があり、企業の製造物責任が認められる」などとして2社に計約5800万円の支払いを命じた。【安元久美子】
判決によると、兵庫県の自宅にいた女児は2019年、網戸を開け閉めするひもが首に引っかかった状態で家族に発見され、死亡が確認された。網戸はリフォームの際に設置。輪状のひもを引くと、窓枠の上部に収納されている網戸が引き下ろせる構造だった。製品には、子どもの手が届かない高さにひもを束ねられるクリップが付属していたが、出荷時にクリップはひもに装着されていなかった。
黒野裁判長は、こうした網戸は一般的ではないとして「危険性が広く認知されているとは言えない」と指摘。出荷時にひもとクリップは別々の袋に入れられ、取扱説明書も同封されていなかったことから「十分な指示や警告がなく、安全性を欠いていた」として製品の欠陥を認めた。リフォーム業者についても、製品を窓に設置することや、ひもの危険性を両親に説明することを怠る注意義務違反があったと認定した。
22年11月の1審・大阪地裁判決は「製品に欠陥はない」と判断し、両親側が控訴していた。
YKK APは事故後、ひもにクリップを装着した状態で出荷するようになった。同社は「判決文が届いておらず、コメントできないが、当社製品でこのような事故が起きたことを重く受け止め、引き続き品質の安全性の維持・向上に努める」とコメントした。
女児の両親「不幸な事故、もう二度と」
「諦めずに頑張ってきて、よかった。これ以上、不幸な事故が起こらないことを願っています」。逆転勝訴を受け、女児の母親と法廷で判決を見守った父親は目に涙を浮かべて語った。
亡くなった女児は、2人きょうだいの妹。活発で明るく、家族のムードメーカー的存在だった。幼稚園のお遊戯会のダンスを家でもよく披露していたという。
事故が起きたのは、母親の実家を2世帯住宅にリフォームした3日後だった。母親は「リフォームしなければよかった」と自分を責め続け、体調を崩したという。両親らは2020年8月、「同じような事故が二度と起きてほしくない」との思いから提訴に踏み切った。判決後、父親は「企業が安全性を軽視したことを社会全体で重く受け止めてほしい」と訴えた。