沖縄住民「犠牲者出るまで対策せぬのか」 オスプレイ飛行再開に怒り

「毎日が不安だ」「なぜ詳しい事故原因を言えないのか」――。鹿児島県・屋久島沖で2023年11月に墜落し、運用が停止されて約3カ月、米軍輸送機オスプレイが14日、日本国内での飛行を再開した。最初に飛び立ったのは沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に展開する米海兵隊機。重い基地負担に苦しむ沖縄で真っ先に飛行を再開したことに、市民には怒りや不安が広がった。
普天間飛行場では午前8時51分ごろにMV22オスプレイ1機が離陸。その後も夕方にかけて複数機が断続的に市街地上空を飛び、離着陸した。
米軍は8日に運用停止措置を解除。日米両政府は鹿児島での墜落事故の原因について「特定の部品の不具合」とし、安全対策を発表したが、部品の名称などは明らかにしていない。
普天間飛行場の滑走路から約500メートル先に住む会社員の呉屋達巳さん(49)は「もっと詳しく事故原因を説明してもらいたい。米軍の言いなりで、住民に犠牲者が出るまで政府は何も対策をしないのか」と怒りをにじませた。17年、当時、長男と長女が通っていた普天間第二小学校に米軍ヘリコプターから窓枠が落下した。現在も次女が同小に通う。呉屋さんは「元々、欠陥機と言われるオスプレイ配備に反対していたが、墜落事故で不安は増した。小学校上空も飛ぶ。毎日が不安だ」と訴えた。
宜野湾市の山城賢栄さん(85)は「今回は事故原因について国民に説明があると思っていた。事故原因となった部品が他の機体でも交換されているのかなどは秘密でも何でもないのではないか。なぜ言えないのか分からない」と日米の対応を批判。「(16年に)沖縄県名護市沖でもオスプレイは落ちており、再び墜落しない保証はない。怒り心頭だ」と語った。
沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「機体の何が問題で、どのように変えて、どう安全なのか。海外で唯一オスプレイを買う『お得意さま』の日本が米側に情報開示を求めても、日米安保体制が揺らぐことはないはずだ」と指摘する。政府の説明に疑問の声が上がる中での飛行再開に「地元自治体が反対しても聞く耳を持たないという姿勢を続ければ、今後の自衛隊での運用についても懸念や不安が強まり、政府として得策ではない」と語った。
報道陣の取材に応じた沖縄県の玉城デニー知事は「許されると思っていたら大間違いだ」と憤りをあらわにした。14日朝、那覇市の知事公舎で上空を飛ぶオスプレイ独特の音を聞き、「本当にやるせない、言いようのない気持ちで胸がいっぱいになった」という。防衛省沖縄防衛局の職員は2回にわたって説明のため県庁を訪れたが、詳しい事故原因は明らかにしなかった。防衛省の対応を、玉城知事は「誠意がなく、許しがたい」と非難した。
疑問の声は沖縄以外でも上がっている。墜落事故が起きた鹿児島県には13日に九州防衛局の職員が説明に訪れたが、14日の飛行再開については言及がなかった。塩田康一知事は「私どもも報道で再開を知って防衛局に問い合わせた。丁寧な情報提供にはなっていないんじゃないか」と語った。
陸上自衛隊のオスプレイが配備される予定の佐賀県の山口祥義(よしのり)知事も「もう少し細かくお話をいただかないと、皆が納得する形にはならないのかなと思った」と苦言を呈した。【宗岡敬介、比嘉洋、宝満志郎、五十嵐隆浩】

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