首都直下地震で1000兆円=資産と経済活動の被害推計―事前対策で大幅減・土木学会

土木学会は14日、首都直下地震や東京湾、伊勢湾、大阪湾の巨大高潮などを対象に災害被害額を推計した報告書を発表した。首都直下地震については政府の中央防災会議が2013年に公表した被害想定に基づき推計。同会議は家屋などの「資産被害」を47兆円としていたが、土木学会は道路や橋などが壊れ、企業の生産活動が打撃を受ける「経済被害」がその後約20年間で954兆円に上るとした。
これら直接、間接の被害合計1001兆円に加え、国と地方自治体の財政的被害が税収減36兆円、復興費353兆円で計389兆円と推計した。
一方、事前に21兆円以上投資して道路や港湾、建物の耐震性を強化すれば、経済被害を39%(369兆円)減らせると試算した。
報告書をまとめた小委員会の藤井聡委員長(京都大教授)は記者会見で、「道路や橋の被害の大きな所は復興が遅れる。何もしなければ本当にひどいことになる」と事前の対策の重要性を訴えた。
土木学会は18年発表の報告書で、阪神大震災を参考に首都直下地震の経済被害を731兆円としていたが、今回は東日本大震災を踏まえて大幅に引き上げた。南海トラフ地震についても、政府が被害想定を見直した後で更新する方針。
巨大高潮による資産被害と経済被害については、沿岸都府県の室戸台風レベルの浸水想定に基づき、東京湾で60兆円と55兆円、伊勢湾で58兆円と68兆円と推計。大阪湾は周囲の低地が広いため、77兆円と114兆円となる。
事前に海岸の堤防を強化する効果にはかなりの違いがあり、東京湾は5000億円の投資で経済被害が70%(39兆円)減るのに対し、伊勢湾は1兆3000億円で41%(28兆円)減少。大阪湾は9000億円の投資でも23%(27兆円)減少にとどまるという。
[時事通信社]

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする