痴漢の最多は「埼京線」ではなく「武蔵野線」、原因は車内の大混雑に 警察が警戒強化

毎日多くの通勤・通学客が利用する首都圏の鉄道路線の中で、「痴漢が多い」とのイメージが定着してきたJR埼京線だが、この数年は別の路線での被害相談数が埼京線を上回っている。東京のベッドタウンでもある埼玉県内では、ラッシュ時の混雑率の高さで知られるJR武蔵野線での被害相談数が最も多いという。警察当局は私服、制服の警察官を乗車させるなど警戒を強化している。
埼京線のイメージはネットの影響も
埼玉県警鉄道警察隊のまとめによると、令和5年中に寄せられた路線別の痴漢被害相談件数はトップが武蔵野線で、2位はJR高崎線、3位は東武東上線だった。4年も順位は同じで、この数年は埼京線が武蔵野線を上回ったことはないという。
これまで埼京線で痴漢が多発するとされてきたのは、「インターネットに埼京線での痴漢予告や、『埼京線は痴漢がしやすい』といった書き込みが多いためではないか」(鉄警隊)とみられ、JR東日本には今も埼京線での被害の声が多く寄せられているという。
埼玉、千葉両県と東京都内を半円状につなぐ武蔵野線が相談件数で埼京線を上回るのは、武蔵野線から都心部に向かう別路線への乗り換え客が多く、埼玉県内の接続駅などで県警に相談しやすいという特性もあるようだ。
ラッシュ時の大混雑
痴漢被害はどこでも起こり得るが、警察庁のまとめでは令和4年の全国の痴漢検挙件数2233件のうち、電車内は42・1%で圧倒的に多くなっている。
理由は車内の混雑だ。国土交通省がまとめた4年の都市鉄道のラッシュ時の混雑率調査によると、首都圏の区間別で最も混雑していたのは日暮里・舎人ライナー赤土小学校前-西日暮里の155%。次いで埼京線板橋-池袋の149%、武蔵野線東浦和-南浦和の148%だった。
埼玉県に限れば、武蔵野線が最も混雑しており、痴漢被害相談の多につながっているとみられる。
ハード、ソフト両面で対策
鉄道事業者も対策を着実に進めている。JR東では平成31年3月までに首都圏を走る在来線約8500両全てに「痴漢検挙の有力な証拠になる」(埼玉県警)という防犯カメラを設置。また、埼京線で令和2年、痴漢通報アプリの実証実験を行うなど、ハード面で充実を図っている。
ソフト面では埼玉県警が、痴漢被害相談の多い武蔵野線での警戒を特に強化。私服、制服の警察官を多く乗車させるなどして警戒を強化しているという。
痴漢を巡っては、厳罰化も進んでいる。従来は都道府県条例違反(通常、法定刑は6月以下の懲役または50万円以下の罰金)で検挙・起訴されるのが一般的だったが、5年7月に不同意わいせつ罪が施行され、同罪に問われることもある。同罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役となっている。(半田泰)

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