ホストクラブ、ぼったくり、立ちんぼ…さまざまなトラブルや問題が表面化し、改めて注目を集める日本屈指の歓楽街、東京・歌舞伎町。この街に住み、移ろいゆく実情を見つめ続けてきたルポライター、國友公司氏(31)は「新型コロナウイルス禍と前後して街が変化した」と分析する。近隣繁華街の再開発で若者が集中していることも指摘、「取り締まりの強化だけでは『混沌』は変わらない」と強調する。
コロナ禍が転機
「大久保公園周辺に立つ女性は、スカウトしてはダメだ。(風俗)店で問題を起こしてクビになった人ばかりだから」。國友氏は、かつて取材の一環で風俗店などに女性を斡旋(あっせん)するスカウトの実務研修を受けた際、こう説明を受けたという。
公園周辺の路上に立ち、通りかかる男性に声をかけて売春を持ち掛ける「立ちんぼ」。その存在は近年クローズアップされたが、「もっと以前から存在していた」という。
「今は、店に在籍している子も副業として立っているし、一般の会社員や学生が軽い気持ちで立っている」
変化の契機として挙げるのが、コロナ禍だ。ホスト通いの費用を風俗店勤務で捻出していた女性が、コロナ禍で客が来なくなると、店の外で客と会って個人的に売春するようになったという。
國友氏は「店を通さなければ全て自分の稼ぎになるため、次々に路上に出てきた。噂が噂を呼び、若い子も集まってきた」と語る。
ホストクラブの高額な売掛金(つけ払い)問題も、同じ時期に顕在化。「コロナ禍で歌舞伎町は大きく変わった」と感じるという。
開発による変化も
加えて、歌舞伎町を巡る最新の問題は、大久保公園の至近にある通称「トー横」に中高生などの未成年者らが集い、薬のオーバードーズ(過剰摂取)や性犯罪などが横行していることだ。
もともと「大人の街」とのイメージがあった歌舞伎町にも「以前から子供はいた」(國友氏)。ただ、歌舞伎町に若年層が増えたのには、同じく若者が集まる場所として知られた渋谷の再開発が関係している可能性があるという。
「渋谷で下着を売ったり、援助交際したりしていた女子高校生らが再開発で一掃され、歌舞伎町に移ってきた」。現地に住む実感として「低年齢化が顕著になったのはここ5年ぐらい」と振り返る。
歌舞伎町を巡る問題は国会などでも取り上げられ、警視庁が取り締まりを強化。ホストクラブの営業停止や違法行為に関与した関係者の逮捕、未成年の補導などを進めた結果、大久保公園周辺で立ちんぼの姿が減り、ホストクラブ側も売掛金の仕組みの変更を明言するに至った。
ただ、國友氏は「大久保公園近くにいるニューハーフの立ちんぼなどは、ほとんど取り締まられていない」と、今も残っている問題はあると強調。
「暴力団や外国人犯罪など、時代が変わる中でも歌舞伎町は常に何かしらの問題を内包してきた。それが街の魅力でもあるが、行政や警察は将来像について明確なビジョンを持って取り組まなければ浄化されることはないだろう」と語った。(外崎晃彦)
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國友公司(くにとも・こうじ) 平成4年、東京都生まれ。ライターとして大阪・西成地区に住みルポを執筆。東京・歌舞伎町の通称「やくざマンション」に住み、1年間の体験記録をまとめた「ルポ歌舞伎町」(彩図社)を上梓する。以降も歌舞伎町周辺に住み続け、街の変遷をウオッチしている。