公設民営の高齢者施設が廃止方針、転居求められた入所者「寝耳に水」…さいたま市は補償視野

さいたま市が、高齢者介護などを行う公設民営の複合施設「グリーンヒルうらわ」(緑区)を廃止する方針を決めた。同施設内のケアハウス(軽費老人ホーム)では約70人の入所者が生活を送っており、市から突然転居を求められたことで動揺が広がっている。
修繕に22億円

市高齢福祉課によると、施設の廃止を決めたのは昨年11月。建設から約30年がたち、大規模修繕に22億円以上の費用が見込まれることや、それ以外にも年間2億2000万円の管理費がかかることなどを理由に挙げている。
市は今年2月から入所者らへの説明を開始。介護老人保健施設とデイサービスセンターを今年度末で廃止し、ケアハウスは入所者の転居支援を行った上で2029年度末に廃止する方針を伝えた。
ケアハウスに入所する女性(76)は「寝耳に水だった」と憤る。女性は、自宅の階段の上り下りが大変になり、区役所に老人ホームの紹介を頼んだところ、この施設を紹介され、16年に夫と入所した。自宅は売却しており、他に行く当てはないという。
入所者に募る不安

入所者の中には、昨年4月に入所してきたばかりの人もいる。突然示された廃止方針に、不信感を募らせている人は多い。
民営のケアハウスなどに移るとしても、入居一時金や引っ越し費用などの支払いが負担となる。市内のケアハウスは多くが満室で、「遠隔地への転居を受け入れなければならないのではないか」と不安を募らせる人もいる。
さいたま市の清水勇人市長は11日の記者会見で、「不安をしっかり解消しながら、(転居支援を)丁寧に進めたい」と話す一方で、廃止に向けたスケジュールは変更しない考えを示した。市は、移転に当たって入所者へ補償することも視野に入れている。
これに対し、入所者は12日、68人の署名を添えて廃止方針の見直しを求める要望書を市に提出。白紙撤回がかなわなかったとしても、廃止時期を15年遅らせるよう求めた。
市は、グリーンヒルうらわ以外に公設デイサービスセンター4か所の廃止方針も決定。高齢者施設の見直しを進めており、今年6月の市議会定例会に、関連条例の改正案を提出する方針だ。

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