裏金キックバック「森会長のときに始まったのは間違いない」元安倍派・山本一太群馬県知事が語った真相

「それ(裏金のキックバック)が森(喜朗)会長のときに始まったことは、もう間違いないんです」
裏金問題の真相をこう語るのは、かつて自民党安倍派(清和会)に所属し、参議院議員を4期24年務めた山本一太群馬県知事だ。現在は永田町の外にいるものの、自民党、そして安倍派の裏も表も知る山本知事が、文藝春秋ウェビナーの「青山和弘の永田町未来caf」に登場し、裏金作りのスキームの実態や意中のポスト岸田候補、また国政復帰の可能性について赤裸々に語った。
真相を語らない安倍派幹部に疑問も
自らは裏金のキックバックを受けたことはないという山本知事。かつて安倍派に所属し「自分も責任を感じる」と前置きした上で、“裏金作りのスキームが始まった時期”について、次のように説明した。
「明確なところは一つあると思うんです。私が1995年に初当選したときは(清和会は)三塚派だったんですよ。三塚(博)さんの時にキックバックは全く記憶がないんで、始まったのは間違いなく森派が始まってからだと思うんです。会長の了解がなくて(キックバック)できるはずがないんで、森さんが知らないはずがないというのが私の感覚です」
その上で真相を語らない安倍派幹部らの姿勢に疑問を呈した。
「何でこんなにみんなが分かっていることを言わないのか。当然森会長の時にやったのに、みんな口をつぐんでいるのはとても不思議です。本当に自民党のことを思うのなら、やはりそこはお話しになるべきだと思う」
そして山本知事は安倍派幹部の身の処し方を「頓珍漢だ」と批判した。
「離れて見ると、この頓珍漢さは結構深刻で、塩谷(立・清和会元座長)さんが自民党の処分に異議申し立てをしたのは、大体ギア3段ぐらいずれてますよ。座長だったけど知らなかった、自分は気の毒なんだみたいな形で党を責めることは、一般の人たちから見たら全くピント外れなわけです。一刻も早く潔く(議員を)辞めて、次の選挙に備えるのが普通だと思うんです。そしてこれはお叱りを受けるかもしれませんが、西村(康稔前経産相)さんと世耕(弘成前参院幹事長)さんには、是非今回の事を反省して、困難を乗り越えて帰ってきてもらいたいと思います」
これに対して筆者は、西村氏ら安倍派幹部は党の処分を待たずに、もっと早く覚悟を決めて離党なり議員辞職していれば、逆に将来に繋がったのではないかと指摘した。これについて山本氏は「五人衆の中で牽制し合ったんではないか」と理解を示しつつ、こう語った。
「もうちょっと率先して責任を取っていればここまで騒ぎになってないと思います。群馬県みたいな保守王国でも若手県議がこの間、『裏金問題に関わった人は一回議員辞職するべきじゃないか』って言ってました。こうした地方議員たちの思いも受け止めないと、次の衆議院選挙で自民党は結構痛い目を見ると思います」
河野太郎は「ポスト岸田」にふさわしいのか
こうした中、岸田内閣の支持率は低迷し、9月の自民党総裁選での岸田総理の再選は難しいとの見方が強まりつつある。山本知事は岸田総理の後継には、誰がふさわしいと考えているのか。
「私は以前から河野太郎(デジタル相)に頑張ってもらいたいと。河野太郎にいわゆる永田町的バランス感覚はないんですよ。例えば自民党改革をやると彼が言ったら本当にやる。今の日本を変えられるのは、自民党を変えるのは、河野太郎しかいないと思ってます」
一方、番組に出演した朝日新聞の曽我豪編集委員はこれに異論を唱えた。
「もし河野さんが(ポスト岸田の)可能性があるとしたら、既にこの時点で(裏金問題に対して)何か発言していないと駄目なんじゃないか。先ほど山本さんがおっしゃった『森元総理の関わりをきちんと喋るべきだ』と言っていない人たちが、総裁選になって急に『岸田さんの対応が悪かった、裏金問題はこうだった』って言っても、世の中には響かない。自民党は、今回それで(総理の顔を代えれば)済むかってことをきちんと考えて欲しいと思います」
これに対して山本知事は、「自民党最大の危機は、危ない危ないとか言いながら本当の危機感がないこと。それから若手があまりにも元気がなくておとなしい。こういうときに政治生命をかけて党のために何か行動するとか、叫ぶ人たちが圧倒的に少ないのが残念」と述懐した。
山本知事が国政に復帰する条件とは?
昨年、群馬県知事に再選を果たした山本氏。県知事については「これ以上やりがいのある仕事はない」と話すが、その一方で国政復帰について一つの可能性に言及した。
「群馬県のためにしっかりと最後までやりたいと言っているんですけど、唯一例外があるとすると、河野太郎が総理大臣になって『一太さん、助けてくださいよ』って言ったときだけは断れないかなと。河野太郎が総理になるのはかなり難しいって分かっているんですけど、本当に総理になって命を賭けてやるって時に『知事を辞めてくれ』って言われたら、その時だけは国政に復帰しようと思うかもしれません」
参議院議員当時は、ベテラン議員から「跳ね返り者」などと揶揄され「異端児的」な存在だった山本氏。その歯に衣着せぬ物言いは健在だ。従来型の政治からの脱却が求められ、永田町の人材不足が深刻な今、山本氏が国政に復帰する機会は訪れないだろうか。政局が激動する中、今後も山本知事の動向を注視する必要があるだろう。

山本氏が出演した、文藝春秋ウェビナー「青山和弘の永田町未来caf」は、「 文藝春秋 電子版 」で見ることができる。
(青山 和弘/文藝春秋 電子版オリジナル)

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