月面に宇宙船の燃料工場、JAXA計画…水から水素作るプラント開発へ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、宇宙船の燃料を月面で製造する技術を実証するプラントの開発を計画していることがわかった。月の水から燃料を作る技術を独自に確立し、月面で2035年以降に燃料工場を着工、40年までの稼働を目指す。今年度以降、プラント開発に協力する企業を公募する方針だ。
長期間の月面探査を実現するには、宇宙飛行士を月に送り、持続的に活動できる環境を整える必要がある。月面では宇宙船や探査車が移動手段になるが、燃料を地球から補給するには費用や時間がかかり、現地で製造できる工場が不可欠だ。
月の極域には、水があるとされる。JAXAの構想では、水を含む月の砂「レゴリス」を掘削して砂から抽出した水を電気分解し、燃料となる水素と、燃焼に必要な酸化剤となる酸素を取り出す。水素は月の低温環境を利用し、液体にして貯蔵する。液体水素は、既存のロケットの燃料にも使われている。
試算では、月で継続的に活動するのに必要な燃料は年間57・6トン。JAXAはこれまで、プラント大手・日揮ホールディングスの海外事業会社「日揮グローバル」(横浜市)などと契約し、技術実証用プラントの概念設計を進めてきた。
今年度以降、月面環境を模した実験施設の国内整備に向け、協力企業を公募する方針だ。産官学の技術実証を経て、月面で30年代に地盤調査、35年以降に工場着工という長期計画を描く。
日本も加わる米国主導の有人月探査「アルテミス計画」では、日米両政府が今月、日本人2人の月面着陸で合意した。将来的には有人基地の建設も計画されている。月面の燃料工場は他国も構想中で、日本と共同建設する可能性がある。
JAXA国際宇宙探査センターの島田潤研究開発員は「民間の力も借りて開発すべき技術を見極める必要がある」と指摘。日揮グローバルの深浦 希峰 ユニットリーダーは「プラント建設の実績を生かしたい」と話す。
月面開発には、複数の企業で参画の動きがある。空調設備工事大手の高砂熱学工業(東京)は、水電解装置を開発。宇宙新興企業アイスペース(同)が今冬に打ち上げる月着陸船に載せ、水電解の実証実験を行う。探査車で地中にヒーターを差し込み、水蒸気を回収することも検討している。
また、三菱重工業は、日本とインドの月極域探査計画「 LUPEX 」で使う探査車の開発を進めている。
◆レゴリス=惑星や衛星などの天体表面を覆う砂で、流れ星の元となる岩石などが落下した衝撃で発生する。月面のレゴリスは粒子が細かく、宇宙服内への侵入を防ぐ対策が必要な一方、建材などとして利用する方法も研究されている。

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