千葉でキョン大繁殖、茨城が北上警戒…被害出る前に対策強化・目撃情報に報奨金も

千葉県南部を中心に大繁殖しているシカ科の特定外来生物「キョン」が近年、県境を越え、茨城県内でも見つかっている。まだ確認は4例だが生後約1年で出産するほど繁殖力が強いため、茨城県は農作物などへ被害が出る前に手を打とうと、目撃情報を求めるチラシを作成したほか、有力な情報に報奨金を出す制度を創設するなど、対策強化に乗り出した。(水戸支局 嶋村英里)
同県でキョンが初めて確認されたのは2017年。県境近くに架かる 神栖 市の常陸川大橋上で、車にひかれて死んでいた。その後はしばらく目撃情報はなかったが、22年12月に石岡市の山中に設置したカメラに映り、23年9月に筑西市、同12月には下妻市と立て続けに見つかった。いずれもオスだった。
県は今年4月、キョンの捕獲許可の権限をイノシシなど他の鳥獣と同様に市町村に一本化。狩猟者向けに目撃情報や捕獲への協力を求めるキョンの写真入りチラシを作成したほか、有力な目撃情報を提供した人に報奨金を出す制度を5月中に導入する予定だ。
県環境政策課の担当者は、「万が一キョンが定着した場合に備えて、狩猟者育成などの対策も県を挙げて進めたい」と話す。
千葉県では、勝浦市の観光施設で飼われていたキョンが逃げ出して野生化したとみられ、県内の推定生息数は22年度末で約7万1500頭。09年度末の約1万9100頭から約3・7倍に増えた。県内17市町で定着が確認され、22年度の農作物被害は約421万円に上る。夜間や早朝に「ギャー」と大きな声を出すため、苦情も相次いでいる。
県はキョンの捕獲にかかる費用について、国の交付金と合わせて1頭あたり最大6000円を市町村に補助。同県一宮町と市原市を東西に結ぶ「分布拡大防止ライン」を設定し、集中的に捕獲するなどの対策を続けている。
◆キョン=体長約1メートル、体高約50センチで、中国南東部と台湾が原産の草食獣。単独で活動し、オスは行動範囲が広いとされ、国内では房総半島と伊豆大島で定着が確認されている。台湾では高級食材としても知られる。

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