ゴールデンウイーク(GW)は日本各地の観光地を中心に多くの人でごった返した。外国人観光客が殺到しインバウンドに沸き立つところもあれば、オーバーツーリズムによる混雑や混乱で地元住民の生活にも影響が出ており、社会問題化している。
GW中に話題になったのは、山梨・富士河口湖町の「富士山ローソン」だ。コンビニのローソンの屋根の上に富士山が乗っかっている日本を象徴する〝映え写真〟が撮影できると、外国人観光客が歩道や向かいの店舗敷地内にひしめいた。同町は先月30日から高さ2・5メートル、幅20メートルの黒幕を設置する工事に着手したが、他の場所でも「富士山ローソン」が撮影できるスポットが開拓され、いたちごっことなりそうな雲行きだ。
神奈川・鎌倉では江ノ電がパンク状態になり、乗車するまで1時間を超えた。市は3~4日の両日に鎌倉駅から大仏や長谷寺方面に向かう約2キロを電車ではなく、徒歩を推奨する実証実験を行った。
江ノ電ではかねて漫画「SLAM DUNK」に登場する鎌倉高校前駅の踏切に海外のファンが押し掛ける問題があった。地元住民は「江ノ電は以前から観光客が多すぎて、もう無理。徒歩で移動した方が早い」と遅すぎる〝実験〟にあきらめ顔だ。
一方、京都のある飲食店では外国人観光客に悩まされながらも好転させた例がある。コロナ禍後に外国人客が殺到した中、ちょっとしたトラブルから嫌がらせのように口コミサイトに組織的に低評価をつけられ、客が全く寄り付かない事態に見舞われた。一時、廃業も覚悟したが、懇切丁寧な接客で低評価を覆す満点評価を集め、いまや人気店と変貌したのだ。
オーナーは「オーバーツーリズムで逆に苦しみましたが、今ではお客さんの9割が外国人。これから日本の観光地は円安の加速で、ますますインバウンドに頼らなくてはいけなくなる。外国人観光客はネットのクチコミサイトでの情報や評価でお店や行き先を選ぶのが顕著で、泣き寝入りせずにクチコミサイトなどをうまく活用していく努力が必要」と力説する。
観光客の増加にはプラスの面もあれば、マイナスの面もある。各自治体、店舗の苦慮は続く。