気象庁は10日(金)に最新のエルニーニョ監視速報を発表しました。エルニーニョ現象は急速に解消へ向かっており、春の間には終息して、平常の状態になる見通しです。その後、夏から秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が次第に高まる見込みです。
海洋と大気の状態がエルニーニョの終息を示唆
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は+0.8℃で前月に比べて0.4℃下がりました。エルニーニョ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の2月の値は+1.7℃で、去年4月から11か月連続して+0.5℃以上となっているものの、12月までの最大の+2.2℃を下回っています。太平洋赤道域の海洋表層の水温は中部と東部で平年より低くなりました。太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は平年並で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年と同程度となりました。このような海洋と大気の状態はエルニーニョ現象時の特徴が弱まりつつあることを示していて、昨年の春から続いているエルニーニョ現象は終息に向かっていると考えられます。
ラニーニャ現象が発生する可能性も
実況では太平洋赤道域に海洋表層の冷水が見られています。エルニーニョ・ラニーニャの動向を予測するコンピューターシミュレーションの結果によると、今後は冷水の東進が続いてエルニーニョ監視海域の海面水温が次第に下降し、春の間に基準値に近づくと予測しています。その後は太平洋赤道域の西部~中部で貿易風が強まるとともに、中部~東部の冷水がさらに強まり、夏の間は海面水温が基準値に近い値か基準値を下回る値で推移すると予測しています。5月にはエルニーニョ現象となる確率が10%まで低下して終息に向かう予想です。夏以降はラニーニャ現象が発生する可能性が高まり、9月には平常の状態が続く可能性よりも高くなります。
エルニーニョが解消しても海面水温は高温傾向
エルニーニョ現象は世界的な高温傾向の一つの大きな要因になっています。ただ、それ以外の海域も海面水温の高い状況です。エルニーニョ現象が解消しても、この傾向はしばらく続くとみられます。日本でも5~7月の気温は平年より高くなる見通しで、夏の気温は全国的に平年より高い猛暑の予想です。今後の天候に大きな影響を与える海の変化が引き続き注目されます。
出典気象庁