5月2日、山梨県警甲府署は死体遺棄の疑いで、山梨県農業信用基金協会職員の小(お)棹(ざお)将太容疑者(35)を逮捕した。生真面目な男を密かに蝕んでいたのは――。
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「恋心を抱いていたが、実らなかった」身勝手すぎる男の犯行
社会部記者の解説。
「小棹は4月30日、同僚の平岡美恵さん(40)の退勤を待ち伏せし、声をかけたところ拒絶されたため、殴って無理やり車に乗せた。この時小棹は発見を遅らせるためか、平岡さんの車を運転。その後、甲府市の勤務先から約40キロ離れた身延町の河川敷に、寝袋に包んだ平岡さんの遺体を遺棄したとされる」
平岡さんは以前から小棹に付きまとわれていると感じ、上司に相談している。犯行当日は上司が小棹に聞き取りを実施していた。
「1日、平岡さんの家族が行方不明者届を出し、警察が関係先を調べる中で小棹が浮上。小棹は容疑を認め、本人の案内で河川敷で遺体が発見されたため、逮捕となった」(同前)
司法解剖の結果、平岡さんの死因は窒息死と判明。遺体には打撲痕があり、首を絞められたような痕も残っていた。
小棹は警察の調べに対し、「話をしようと思ったが、拒まれたので殴って車に乗せた。その後も殴り続けていると動かなくなったので、殺してしまったと思い遺棄した」「恋心を抱いていたが、実らなかった」などと供述。
あまりに身勝手すぎる蛮行に走った男の来歴はどのようなものなのか。
約4年前に生活の拠点を山梨県に移し、妻とは離婚
福井県鯖江市で育った小棹は、地元の公立中学時代からある活動にのめり込む。
「当時、福井県のNPOが、子どもたちのために毎年夏にキャンプを企画していました。将太はそこに参加してきて、以来10年ほど活動に携わっていました」(NPO関係者)
中学を卒業してからは、運営スタッフの一員としてキャンプ地を決め、数十人の子どもたちを引率していたという。
「優しい中にも厳しさがあり、子どもたちからも信頼されているスタッフでした。京都の大学を卒業し、就職してからも夏には顔を出してくれていた。人手不足でNPO自体が解散するまで、熱心に取り組んでいました」(同前)
2012年には富山県出身の年上女性と結婚。子どもをもうけ、公私ともに順風満帆なように思えたが、約4年前に生活の拠点を山梨県に移し、相前後して妻とは離婚している。
小棹が人知れず通っていたある“場所”とは
新天地で小棹が仕事とともに精を出したのは、青年会議所(JC)での活動だった。JC関係者が語る。
「『山梨に友人がいないから交友関係を広げたい』と、22年に南アルプス市のJCに入会しています。文章が上手いので、対外的な書類は彼に作成してもらうことが多かった。小棹君本人はいじられキャラで、飲み会で他の会員から『おでこ、広いね』などとからかわれても全然怒らないでニコニコしていましたね」
子どもに好かれ、仲間からも愛される存在だった小棹。ところが、彼は人知れずある“場所”に通っていた。
その場所とは――。
ソープ通いと家族への仕送りで常にお金がなかった
「実は、小棹君は風俗にハマっており、甲府市内のソープランドに足繁く通っていたようなのです。県外のイベントに参加した際も、暇さえあればソープなどの風俗に行っていた」(別のJC関係者)
真面目な男が歓楽街で見せたのは、思いもよらぬ裏の顔だった。
「ソープ通いに加え、家族への仕送りもあるからか、JCでも常にお金がない印象はありました」(同前)
鯖江市に住む小棹の親族の男性を訪ねると、逮捕の報せに肩を落とした。
「将太と最後に会ったのは10年ほど前。子どものことが好きでいろいろ活動していたと聞きます。被害者やそのご家族のことを考えると、なんとも痛ましい限りです……」
JCで見せた愛されキャラと風俗に通う裏の顔。極端な二面性に蝕まれた男の罪はあまりに重い。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年5月16日号)