有本香の以読制毒 中国の〝超限戦〟激化を警戒せよ 台湾親総統就任式直前になぜ?吉村知事、親中〝ホープ〟台北・市長との2ショットに違和感

台湾で20日、1月の総統選挙で勝利した頼清徳氏の就任式が行われる。日本からは、「台湾派」の政治家や文化人が続々と訪台した。実は先週末、私も台北市入りする予定だったが、日本保守党の業務の関係で断念した。
そんななか、異彩を放つ発信をしたのが、大阪府の吉村洋文知事(日本維新の会共同代表)である。
吉村氏は18日、自身のX(旧ツイッター)で、「台北市長となう、やで。」とユーモア混じりのような投稿をした。添えられた画像には吉村氏と並んで、台北市の万安市長がアップで映っている。
リプライ欄には「イケメン揃い踏み」などの好感コメントが並んでいたが、私はそこへ少々皮肉を込めたリプライをした。
「万安氏、来日してたんですね。国民党の〝ホープ〟と日本メディアが呼ぶ方」。
筆者含む「台湾派」日本人が応援する頼清徳氏は、中国が最も嫌う人である。「台湾独立派」のホープと長年言われてきた人だ。台南市長、立法院委員、副総統を歴任、政治キャリアもバッチリだ。
一方の氏は、親中「国民党」の〝ホープ〟。台湾の初代総統・介石の「ひ孫」として世に出たが、政治キャリアは皆無。若きイケメンという「風」で選挙に勝ち、台北市長という大役を得た。
ここまで書けば、吉村知事が、新総統の就任式直前というタイミングに、氏とのツーショットを投稿したことの〝違和感〟をお分かりいただけるだろうか。
吉村氏が台湾についてどんな見解をもっているかは分からない。日本維新の会の共同代表として、「国民党とのパイプ」を重視したのかもしれない。
ただ、型通りの記念写真ならまだしも、わざわざ「仲良しアピール」風セルフィーを投稿するのは解せない。橋下徹元府知事譲りの「逆張り」スタイルかもしれず、あるいはあまり深い考えはなかったのかもしれない。台湾政界に話を戻そう。
1月の総統選の際には立法院(国会にあたる)の選挙も行われ、本コラムでもお伝えしたとおり、頼氏の民進党は第一党の座を国民党に明け渡した。そればかりか、第3極といわれる民衆党の躍進も許した。そのためか、台湾の立法院は現在、乱闘騒ぎが頻発している。新総統の就任式前の19日には、野党による抗議集会が催された。
頼新政権の難しい船出が容易に予想されるが、台湾政治の混乱は決して「対岸の火事」ではない。日本にとっても一大事である。
今後、中国は台湾に対して軍事的威嚇を強めるだけではなく、親中的な野党勢力を使った工作、経済的な浸透、メディアやネットを使った世論戦など、ありとあらゆる手で頼総統を苦しめるだろう。日本はこの動きを最大限に警戒しなければならない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする