〈那須2人殺害〉殺害依頼に「受ける」と居酒屋で即答。ターゲットが誰かもわからず襲いかかった即席実行犯“カンカン”は、報酬でブランド物を購入し大阪で豪遊。ホストを目指すも半年でギブアップの過去

〈〈那須2人殺害〉「世の中、必要なのは顔とカネ」殺人容疑で再逮捕の元NHK大河子役「キラト」は高校時代、すでに“闇落ち”していた。高校の卒業式直前に起こした“事件”とは〉から続く
栃木県那須町で殺害された夫妻の遺体が見つかった事件で、殺人と遺体遺棄の実行部隊とみられる姜光紀(カン・グァンギ) 容疑者(20)=殺人容疑で5月21日に再逮捕=が、仲介役からの殺害依頼を即答で受け、一緒に再逮捕された元俳優の若山耀人(20)容疑者とともに「ターゲットが誰かも知らないまま言われた場所で襲いかかった」と供述していることがわかった。2人は犯行後、大阪で豪遊して報酬の計500万円を数日でほぼ使い果たしたとみられ、呆れた「即席殺し屋」の事件前後の行動が浮かび上がって来た。
〈事件は刺青だらけ〉背中一面に「殿」と「姫」、腹には「鶴」の関根容疑者の刺青全身写真、平山容疑者の「カエルとダルマ」の和彫り、手の甲にマークと「K」のタトゥーを入れた若山容疑者
「元俳優」じゃないほうの男は“依頼”を居酒屋で即答
4月16日早朝、東京・上野で飲食店を多角展開していた宝島龍太郎さん(55)と妻の幸子さん(56)の焼かれた遺体が見つかった事件。警視庁と栃木県警の合同捜査本部は、5月6日までに姜、若山両容疑者や、宝島夫妻の長女の内縁の夫で首謀者とみられる関根誠端容疑者(32)ら計6人をいずれも死体損壊容疑で逮捕。21日に姜、若山両容疑者を、4月15日深夜から翌日未明にかけ、東京都品川区東五反田の空き家のガレージ内で夫妻をハンマーで殴ったうえ電気コードで首を絞めて窒息死させたとの殺人容疑で再逮捕した。
調べでは、宝島夫妻の経営を助ける「番頭」格だった関根容疑者が1500万円の報酬を用意して指示役の佐々木光容疑者(28)に殺害と遺体遺棄を依頼、仲介役の平山容疑者が遺体運搬用の車や凶器を準備して姜、若山両容疑者に実行させ、報酬として計500万円を支払っていたとみられる。
目を引くのはこの“殺人オーダー”をいとも簡単に引き受けた、姜と若山、20歳の2容疑者の行動だ。「姜の供述では、4月上旬に平山から死体を車で運ぶ依頼を受けたが、数日後に報酬が増額され、殺して死体を運ぶ依頼に変わったと言います。
姜は『怖い人が平山の上にいて、やらなかったら何をされるかわからず怖くて受けた』と言ってはいますが、彼は居酒屋で殺人依頼をされ、その場で受けると即答したといいます。若山は平山から電話で依頼され『考えさせてくれ』と一度は言いましたが、『今決めろ』と平山に言われ、やりますと答えています」(警視庁担当記者)
平山容疑者が「ここで遺体を燃やしてこい」と指示
姜、若山両容疑者は殺す相手が誰かも知らされないまま、ハンマーや結束バンドなどの凶器一式を乗せた車を平山容疑者から渡され、空き家へ向かったとみられる。
「平山は実行犯の2人に、殺害相手の年代や『女性(幸子さん)は髪が長い』などのざっくりとした身体的特徴を伝えていましたが、指示といえば『ガレージにいる50代くらいの男女をやれ』という程度のもので、2人はその通り実行しています。遺体の遺棄場所も平山がネットの地図情報サービスで『田舎のほう』を探し、ここで遺体を燃やしてこいと2人に伝えていました」(捜査関係者)
「高級ブランドバッグやネックレスを買い、クラブで遊んでいた」
遺体が見つかった4月16日には宝島さんの身元が判明。翌17日には平山容疑者は自身が具体的な計画を立てたことを隠し「事件に関わってしまったかもしれない」と警視庁に出頭した。平山容疑者が何を考えていたのかはわからないが、結局その後、捜査本部の追及に共犯者の存在を次々と供述。この時期、平山容疑者から計500万円を受け取った姜、若山両容疑者は大阪で豪遊していた。
「姜の供述では、2人は高級ブランドバッグやネックレスを買い、クラブで遊んでいました。大阪へは遊びに行ったと話しています。姜は4月30日に自宅のある神奈川県内に戻って来たところで、若山は5月1日に千葉県内で、それぞれ身柄を確保されました。そのときの所持金は姜が12万円、若山はたった1万円でした」(警視庁担当記者)
平山容疑者は殺人実行部隊に2人を選んだ理由を「ふだんから喧嘩っぱやく、怖い物知らずの雰囲気があったから」と供述している。子役でNHK大河ドラマにも出演した若山容疑者の“闇落ち”の経緯は♯33で詳報したが、彼はどういう人間なのか。「カンカン」と呼ばれていた姜容疑者の幼少期を地域の人が振り返る。
「お父さんは自営業で裕福な家庭でしたが、かなり厳しかったですね。小学校のころスイミングスクールでうまく泳げなかったカンカンを強く叱っていました。そのせいか学校では問題行動を起こし、低学年の時は女の子を『ブス』と言っていじめたり、授業をボイコットして教室の後ろで寝そべったりしていました」(同級生の家族)
少年野球チームのキャッチャー、中学受験、高校卒業後は…
一方で別の同級生の家族はほかの側面を覚えていた。「彼は優しい子だったので、事件と結びつかないんです。小学校のとき、彼の友達が校内でけがをして救急車で運ばれたとき、姜君は校舎の二階の窓から大声でその子の名前を呼び続けていました。友達を心配してもそこまでする子はなかなかいないと思います」(別の同級生家族)
小学校時代は少年野球チームのキャッチャーでレギュラーだった。「毎週土日の練習に欠かさず来る野球少年でしたよ。野球経験のないお父さんも球拾いなどを手伝うコーチとして付き添っていました。問題行動なんて全然なかったです。卒業すると、お受験で県内の私立中へ進学し、内部進学で高校も卒業したんじゃないですかね。その後、大学受験に失敗して浪人しているという噂を風の便りで聞きました」(野球チーム関係者)
ガールズバーで羽振りよく「負けテキ」
高校を卒業したのか、また大学進学を目指したのかどうかは確認はできないが、2年ほど前から姜容疑者の生活は変わっていったようだ。「一昨年くらいにカンカンが親のクレジットカードを勝手に使って数百万円単位の借金があるという話を聞いたことがありました。周囲に『借金を返すためにホストやるんだ』と言っていたみたいです。親に借金した形だと思いますが、お父さんが厳しいので本人は怖がっていたと思います」と同級生の家族は証言する。
地元のガールズバーで働くA子さんは、この“借金”にもつながりそうなエピソードを覚えていた。「姜くんはウチの店に1年半くらい前に初めて来ました。身長が高くマッシュルームヘアで今風のイケメンって感じでした。当時、本当は18歳とかだったのに『今ハタチだよ~』と年を偽ってたことを今回知って『えっ』って感じですね。
一番印象的だったのは羽振りのよさかな。初めて来たときも『ぜんぜん飲んで~』って感じで、どんどんキャストにドリンクを出してくれて、ダーツをやって負けたらテキーラを飲む『負けテキ』っていうダーツゲームもやってました。5万円くらいの会計も気にする様子もなく、羽振りがいいので『親が太いのかな?』なんて思ってたんです」(A子さん)
「俺ホストやるから忙しくなる」半年後「ホストはつまらなすぎて辞めた」
その後、A子さんは営業を兼ねてカンカンにときどき連絡をしたが「いまクラブにいるから行けないわ」と返ってくることが多かったという。「それで去年の4月ごろかな? 突然『俺ホストやるから忙しくなる』とか言い出しました。歌舞伎町でという話だったんですけど、ホストを始めたあともクラブにはよく行ってたみたいですよ。
去年の12月には『ホストはつまらなすぎて辞めた』と言ってて、今年の1月に最後に電話したときも、たしか『いま東京のクラブにいる』と話していました」(A子さん)
姜容疑者は渋谷のクラブ「Z」に入り浸っており、A子さんに話していた「東京のクラブ」はこのZの可能性がある。平山、若山両容疑者に加え、指示役の佐々木容疑者もZに出入りし、ここで生まれた人間関係が殺人請負につながったとみられる。即決で引き受けた凶悪犯罪の代償がどれほどのものになるのか、本人たちはわかっているのだろうか。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected](Twitter)@shuon_news
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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