インターネット上でバカラやスロット、スポーツの勝敗予想などをするオンラインカジノ(ネットカジノ)。海外事業者が現地で合法的に運営しているものでも、日本で個人的に利用すれば罪に問われる。新型コロナウイルス禍を契機に「利用者が水面下で急増している疑いが強い」との見方もあり、関係者は警戒を強めている。
巣ごもり需要が影響
警察庁がまとめた風俗営業関連の統計によると、オンラインカジノによる違法賭博事件の摘発件数・人数は、令和元年が18件・152人▽2年は16件・121人▽3年は16件・127人▽4年は10件・59人▽5年は13件・107人-となっている。
目立った上昇傾向は見られないが、昨年1月には、東京・歌舞伎町のカジノ店に設置されたパソコンで海外のオンラインカジノのサイトにアクセスし、客に賭博をさせていた店長や客らが常習賭博容疑や単純賭博容疑で警視庁に逮捕された。売上高480億円は、オンラインカジノ店の摘発としては過去最大規模だった。
同3月には、大阪市のオンラインカジノ店で客に賭博をさせていた経営者や市立中講師らが大阪府警に逮捕されている。
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」は、2年春から3年にわたり続いたコロナ禍で不特定多数と接触する競馬や競艇などの公営ギャンブル、パチンコやパチスロといった射幸性遊技機(ギャンブル性ゲーム機)を控える代わりに「巣ごもり需要が影響しオンラインカジノの相談件数が増えた」とする。
捜査にひと工夫必要
オンラインカジノを巡っては、山口県阿武町で4年、コロナ給付金4630万円を誤って振り込まれた男が、返還を拒んだ末に「(金は)海外のネットカジノで全部使った」などと話したことで大きな注目を集めた。
警察関係者は「自宅のパソコンやスマートフォンで個人的にサイトを利用するのを発見することは困難」と本音を吐露。摘発に関する統計上の数字が「氷山の一角」であることを示唆する。
違法賭博の捜査は通常、賭け事が行われている店舗を発見し、踏み込んで店の関係者や客から事情聴取し、摘発する-という流れで行われる。例えば、賭けマージャンを摘発するには「金額の大きな賭博が行われている雀荘を突き止めるのが捜査の常道」(同関係者)という具合だ。
ただ、5年に摘発されたオンラインカジノ事件のうち無店舗型は5件、32人に上った。これは「捜査にひと工夫が必要になり、伝聞など旧来の手法だけでなく、ユーチューブや交流サイト(SNS)からの新たな情報収集にも力を入れ始めた」(同)ためだ。
愛知県警は5年9月、自宅のパソコンでサイトに接続し、賭博する様子を6回にわたってライブ配信していたユーチューバーを常習賭博容疑で逮捕。また同月には、オンラインカジノで使われる決済システムを開発・運用し賭博する手助けしたとして、警視庁と福岡、愛知両県警が常習賭博幇助(ほうじょ)の疑いで沖縄の男らを逮捕した。
オンラインカジノの「決済代行業者」を幇助容疑で摘発した初の事例で、東京地検は、単なる幇助にとどまらないとして、常習賭博の罪に切り替えて起訴。沖縄の男はその後、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益仮装)の疑いで警視庁などに再逮捕された。
無店舗型摘発に注力
考える会のホームページによると、違法オンラインカジノへの日本からのアクセスは、3年には従来の100倍に増え、米、独に次ぐ世界第3位になった。スポーツベット(スポーツ賭博)を含めたオンラインカジノによるギャンブル依存症の相談件数も3年から急増。5年には全体の2割を超えたとしている。
米大リーグの大谷翔平選手の元通訳が「大谷」名義の銀行口座から24億5千万円を不正送金し違法なスポーツ賭博でつくった多額の借金を返済していたことが発覚するなど、ギャンブル依存症に改めて注目が集まる中、「オンラインカジノが原因の依存症は今年以降、さらに増えるのではないか」(同)との見方は強い。
警察庁は「自宅のパソコンからのアクセスが大幅に増加した」とみて都道府県警に取り締まりの推進を指示している。