奥能登4市町「エコノミークラス症候群」検診で被災者の8・8%に血栓、一般を大幅に上回る

能登半島地震で避難生活を送った石川県の奥能登4市町の約1500人を対象に、医師や臨床検査技師らがエコノミークラス症候群の検診を実施したところ、原因となる血栓が8・8%の被災者から見つかった。一般的に血栓が見つかる割合は2~4%とされる。検診にあたった医師らは、当初の避難生活の厳しい環境が要因とみている。
検診は1月8日~4月29日、被災者1548人に実施。脚にエコー検査をした結果、136人(8・8%)に血栓があった。自治体別にみると、輪島市が761人中61人(8・0%)、珠洲市が292人中33人(11・3%)、穴水町が292人中29人(9・9%)、能登町が203人中13人(6・4%)だった。
検診を行った「エコノミークラス症候群予防・検診支援会」の医師らによると、災害と関係ない一般の人が対象の場合、血栓が確認されるのは2~4%で、能登半島地震の被災者はこれを大幅に上回っていた。
2016年の熊本地震では、余震を恐れて車中泊をした人が多かった。熊本県の最新の統計によると、同症候群で54人が入院(うち1人死亡)。このうち43人が車中泊をしていた。
今回の地震でも、輪島市門前町の避難所に身を寄せていた74歳の男性が4月24日、同症候群で亡くなった。男性が地震直後に滞在した避難所は混み合い、寝具は限られ、夫婦で1枚の布団を使用。寝返りが打てないなど、休息は十分に取れず、配布された飲料水だけでは、水分の摂取も足りていなかったとみられる。
一方、石川県七尾市の恵寿総合病院が1~2月、手術前の入院患者や脚のむくみを訴えた患者155人を検査したところ、37人(23・9%)から血栓が見つかった。昨年同時期の検査では8・4%で、西沢永晃・心臓血管外科長は「避難所生活や車中泊の影響があるのだろう。3月以降も、血栓が見つかる人は多い傾向にある」と話す。
県や市町は、十分な水分摂取や運動、血流をよくする弾性ストッキングの利用など、対策を呼びかけるチラシを被災者に配るなどし、予防に取り組んでいる。
奥能登で検診を続けた支援会会長の榛沢和彦医師(新潟大特任教授)は、「発災後早期に多くの血栓ができ、今も残っている場合がある。自覚症状はほぼなく、血栓が大きくなれば死亡に至る恐れがある。早期発見、治療が重要だ」と指摘している。
◆エコノミークラス症候群=脚の静脈にできた血の塊(血栓)が肺の血管に詰まる病気。激しい胸の痛みや息苦しさを招き、死亡することもある。同じ姿勢を続けることや水分不足で発症のリスクが高まる。

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