「警察も手が出せない」…牛歩による〝妨害〟はなぜ取り締まれないのか 辺野古ダンプ事故

「妨害行為であることは明らかだが…」。沖縄県名護市安和(あわ)の国道で6月28日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に抗議していた女性を制止した警備員が死亡する痛ましい事故が起きた。現場の危険性を認識していたという防衛省関係者は「警察もそばにいるが、手が出せない」と唇をかみしめる。事故を防ぐことはできなかったのか。
歩行者は「通行妨害にならない」
南国の海沿いを走る国道449号。1日午後、国道に面した安和港の出口付近には花束や飲み物が供えられていた。
通行人から「人がダンプにひかれた」と通報があったのは28日午前10時15分ごろだった。県警名護署によると、辺野古移設工事に抗議していた那覇市の無職女性(72)と、名護市の警備員、宇佐美芳和(よしかず)さん(47)が左折したダンプカーに巻き込まれた。
移設工事の土砂を運搬するダンプカーに抗議するため車道に出た女性は、足の骨を折る重傷。止めに入った宇佐美さんは頭を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。結果的には抗議活動が招いた事故となった。
「あくまで歩行者なので通行妨害にはならず、取り締まることができない」。ある防衛省関係者は、こう指摘する。
「禁止行為」なければ取り締まれず
土砂を搬出する安和港や本部町の塩川港付近では、プラカードを持ってダンプカーの前をゆっくりと横断する牛歩で土砂の搬入を遅らせようとする市民がおり、名護署だけでなく、県警警備1課や2課もこうした実情を把握していた。
だが、捜査関係者は「座り込んだり、寝転んだりといった道路における禁止行為がない限り、法令に基づく取り締まりは難しい」と明かす。
防衛省関係者は「警備員が『車両が通りますので』と言って抗議者を止めることも、歩行者の通行の妨げになるためできない」と頭を抱える。
現場に信号機を設置し、信号によって規制を行うという方法もあるが、合理的な判断とはいえず、牛歩による「妨害行為」を止める有効な手立てがないのが現状だ。
市民団体は今後の抗議行動を検討へ
玉城デニー知事を支持する「オール沖縄会議」の関係者は「事故が起こらないように法律に基づき、順法的な抗議をしている」と強調。牛歩による抗議活動をしている市民団体のメンバーは「(宇佐美さんとは別の)警備員の合図に問題があったのは明らかだ」との認識を示した。市民団体は6日に会議を開き、今後の抗議行動について検討するとしている。
牛歩で抗議者が道路を横断し終わると、警備員がダンプカーに合図を送り、1台だけ出すという「暗黙のルール」があったとされる。
事故原因の究明はこれからだが、抗議活動を警備していた人が事故に巻き込まれたという事実は変わらない。違法行為がなかったとしても、大きなダンプカーの前をゆっくりと行ったり来たりしながらプラカードを掲げるという抗議の手法に問題はなかったのか、検証が必要だろう。二度とこのような悲劇を繰り返してはならない。(大竹直樹)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする