退任慰労金の減額、取締役会に広い裁量権…最高裁でテレビ宮崎の前社長が逆転敗訴

テレビ宮崎(宮崎市、UMK)の前社長が退任慰労金を不当に減額されたとして、同社側に慰労金などの支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は8日、前社長側の請求を棄却した。深山卓也裁判長は「取締役会には広い裁量権があり、会社に特に重大な損害を与えたとして内規に基づき減額した判断が不合理とは言えない」と述べた。
企業が定めた退任慰労金の減額規定に関して最高裁が判断を示すのは初めてで、5人の裁判官全員一致の意見。請求通り2億350万円を支払うよう同社側に命じた2審・福岡高裁宮崎支部判決を破棄した上で、1審・宮崎地裁判決を取り消し、同社側の逆転勝訴が確定した。
判決によると、原告の渡辺 道徳 前社長(78)は在任中、出張で社内規定を上回る宿泊費を計上していたことなどが発覚し、2017年6月に退任した。
同社には「会社に特に重大な損害を与えた場合、退任慰労金を減額できる」とする内規がある。外部弁護士らでつくる調査委員会は、前社長の過大な宿泊費や、独断で行ったCSR(企業の社会的責任)事業の過大な支出などは「特に重大な損害」に当たり、慰労金の基準額から差し引けるとした最終報告書をまとめた。
これを踏まえ、同社の取締役会は18年、前社長の慰労金を基準額から約85%減額し、支給額を5700万円と決議した。
21年11月の地裁判決と22年7月の高裁支部判決は、「CSR費の支出を『特に重大な損害を与えた』とは評価できず、大幅減額の決議は裁量の逸脱・乱用にあたる」と判断し、同社側敗訴とした。
これに対し、同小法廷は、慰労金の額について「取締役会は、特に重大な損害を与えたという行為の内容や性質、会社が受けた影響などを総合考慮し、判断するべきだ」と指摘。同社の内規に減額の範囲や限度についての定めがないことから、「取締役会には広い裁量権がある」と判断した。
取締役会が、多大な損害を与えたとする調査委の報告書を踏まえた上で、前社長を刑事告訴せずに大幅減額をするに至った経緯などを挙げ、「相当程度、実質的な審議が行われており、取締役会の判断は不合理ではなく、裁量の逸脱・乱用はない」と結論づけた。
明治大の弥永真生教授(会社法)は「テレビ宮崎の内規についての個別判断だが、判決には、一般的に慰労金減額には取締役会に広い裁量権が与えられているという最高裁の価値判断が表れている」と話した。

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