「賠償求めない」念書は「無効」 旧統一教会勝訴の2審破棄 最高裁

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者から違法な勧誘を受けて献金被害に遭ったとして、元信者の女性の遺族が教団側に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は11日、女性が献金後に教団に差し出した「一切の賠償請求をしない」とする念書を「無効」と判断した。教団側勝訴とした1、2審判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。
裁判官5人全員一致の意見。教団への献金を巡る念書の有効性や勧誘の違法性に関して最高裁が判断を示すのは初めて。同種訴訟に影響を与えるとみられる。
判決によると、長野県に住んでいた女性(2021年に91歳で死去)は05~10年、教団側に1億円以上を献金。15年に教団に念書を渡した。1、2審判決はいずれも念書を「有効」とし、教団信者の献金勧誘の違法性も否定した。
これに対し、小法廷は、念書が無効になるかどうかは、当事者間の関係や合意の経緯のほか、趣旨や目的、当事者が被る不利益の程度といった事情を総合考慮して決するべきだとする初判断を示した。
女性は念書を渡した約半年後に認知症と診断されており、念書作成は教団側が主導したとし、「女性が合理的な判断をするのが困難な状態を利用した。女性に一方的に大きな不利益を与えるもので、公序良俗に反し、無効」と述べた。
さらに小法廷は、宗教団体の献金勧誘についても検討した。献金に至る判断過程や献金者側の生活維持への影響といった事情を踏まえた結果、「社会通念上、相当な範囲を逸脱すれば違法」との初判断を示した。
その上で、女性は高齢で判断力の低下が否定できない中、1億円を超える献金をしていたことは異例で、生活の維持に無視しがたい影響を与えたと言及。違法性の判断には多角的な観点からの検討が求められるのに、2審はそれをしなかったと結論付けた。
旧統一教会は「差し戻しという結果になったことは残念。今後も法人の正しさを主張していく」とのコメントを出した。【巽賢司】
旧統一教会献金勧誘訴訟最高裁判決 骨子
・「賠償請求しない」とする念書は元信者の女性が合理的な判断をするのが困難な状態を利用して締結された。公序良俗に反し無効
・献金勧誘行為は社会通念上、相当な範囲を逸脱すれば違法。多角的な検討が求められるが、2審は考慮すべき事情の一部を個別に取り上げて検討したにとどまっている
・審理を尽くさせるため、東京高裁に差し戻す

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