アスベストによる労災の認定を受けた男性の関連文書を国が廃棄したことについて、遺族が国に対し損害賠償を求めている裁判で、神戸地裁は訴えを認め国に一部賠償を命じる判決を言い渡しました。 訴状などによりますと、兵庫県三木市の男性は、建設現場で飛散したアスベストを吸った影響で中皮腫を発症し、2003年に死亡、加古川労働基準監督署に労災認定されたということです。 男性の遺族はおととし3月、神戸市の建材メーカーに損害賠償を求め裁判を起こしましたが、労基署が永久保存しておくべき関連文書を廃棄していたため、遺族はおととし9月、国に対し「重要な証拠によって立証する機会を奪われてしまった」などとして、慰謝料など約300万円の損害賠償を求めて提訴しました。 原告の代理人弁護士によりますと、これまでの裁判で国は訴えの棄却を求め、争う姿勢を示していました。 11日の判決で、神戸地裁は「国がアスベストの労災関連の資料については、文書規定の定めにかかわらず、当分の間廃棄せず保存するよう通知していた状況からすれば、加古川労基署の署長は保存期間を30年に延長しなければならなかったというべきである。また、保存期間を延長しなかった不作為は著しく合理性を欠くものと評価するのが相当、国家賠償法上違法である」として、国に対し約1万1000円の支払いを命じる判決を言い渡しました。 厚労省が2015年に行った調査によりますと、アスベストに関連する文書の廃棄は、全国で約6万4000件にのぼるということです。 ▼原告「訴えが認められてうれしい」 判決を受けて原告は「訴えが認められてうれしい。父も労災記録も戻ってこないが、二度と同じようなことにならないよう対策してほしい」とコメントしています。