防衛相、海自元隊員逮捕は「昨晩知った」 与野党から批判の声

海上自衛隊の潜水手当不正受給問題を巡り、木原稔防衛相は19日の記者会見で、海自元隊員に逮捕者が出ていたことを「18日夜に報告を受けた」と述べ、逮捕自体を把握していなかったことを明らかにした。防衛省側も木原氏に伝えていなかったとし、文民統制(シビリアンコントロール)に疑問符がつく事態に発展した。与野党は7月末にも国会で一連の不祥事に関する閉会中審査を行うと決めたが、与野党双方から木原氏の責任を問う声も出始めている。
防衛省は18日午後の立憲民主党会合で、海自警務隊が2023年11月、元海自隊員4人を詐欺容疑などで逮捕したことを明らかにした。木原氏は野党側よりも把握が遅れたことになる。
木原氏は会見で、「私にしっかり報告するのが文民統制の要諦だ。要諦が守られていない恐れがあれば、由々しきことだ」と防衛省の対応を批判した。逮捕は木原氏の防衛相就任後で、「逮捕の報告を受けていれば、その時点で公表したと思う」と釈明。「今回の重大性を鑑みれば、逮捕した事実を含め把握できた内容はできる限り詳しく公表すべきだった」と述べ、増田和夫事務次官に経緯の確認や改善策をとるよう指示した。
自民党の浜田靖一、立憲民主の安住淳両国対委員長は19日、国会内で会談し、一連の不祥事について衆参の関係委員会で閉会中審査を今月29日の週に開催することで一致。木原氏は批判の矢面に立つことになる。安住氏は「長年、自衛隊が培ってきた信頼を一瞬のうちに失う可能性が高い深刻な事態だ。委員会を開いて衆参でしっかり議論したい」と語った。
防衛相が問題の全容を把握し切れていないことが浮き彫りとなり、与野党では事態を深刻に捉える雰囲気が強まっている。防衛相に元海自隊員の逮捕が伝えられていなかったことは、自衛隊を統治する文民統制に直結する可能性があるためだ。
林芳正官房長官は記者会見で「強力なリーダーシップを発揮し、信頼回復に全力で当たっていただく」と木原氏を擁護。木原氏自身も「まだ防衛省・自衛隊の体質改善をやらなければならない。何がベストな選択かを考えた上で行動したい」と続投に意欲を示した。一方、 立憲民主の泉健太代表は19日の記者会見で、「厳しい目で防衛相を見ている。指導力が足らないのであれば、辞任もあり得ると考えている」と指摘。自民内からも「文民統制が利いていない。事態は重い」(幹部)と悲観論が出始めている。【中村紬葵、田辺佑介】

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